照らすために息をしている (ページ24)

今日:23 hit、昨日:94 hit、合計:168,017 hit

23．いつか君に優しい世界でページ24

.

景瑚が失恋した。

一回だけ一緒にいるのを見たことがある普通に可愛い感じの一個下の女の子。

もうこれって付き合ってるんじゃないか？と思っていたら彼氏がいたらしい。そんなひどいことある？

大きな体に大きな心。
私はこんなにも心の優しい人を景瑚しか知らない。

ふざけてばかりだけど、それは場を盛り上げるためだったり、誰かを励ますためだったり、いつだって誰かのためだった。

こんなにも世界に優しい景瑚に世界は優しくない。

正直、私は景瑚の結婚式に出たら号泣する自信がある。

頼まれなくても
祝辞は読むし、出し物だってするつもりでいる。

“ありがとう君がいてくれて本当良かったよ“

なんて歌を泣きながら絶対に歌う。

だからどうか一番に幸せになってほしい。

幸せでいてほしいんだよ。

「Aちゃんがなんで泣くん」
「だって、なんか悔しい」
「悲しいんやなくて悔しいんや」

純喜くんから景瑚の話を聞いていたら悔しくて涙が出てきた。困ったように眉毛を下げた顔で私の顔を見つめる純喜くん。

純喜くんとこうなれたのも景瑚がいたから出会えたんだし、景瑚の友達ならいい人なんだろうなって思えたからだし。

「Aちゃんはほんまに景瑚が好きやな」

優しい顔をして笑い、私を優しく包み込む。

純喜くんだってかなり心が広いと思う。

純喜くんに失恋したって聞いたら涙が出るほど、悔しくなるくらい、仲の良い女の子がいたら私は絶対に嫌だ。

前に一度「私が景瑚と仲良くしてるの嫌じゃない？」と聞いたら

「なんで？Aちゃんの大事な人は俺にとっても大事やで」

となんでそんなこと聞くの？と言いたげな心底不思議そうな顔をした。

その時にこの人を選んで良かったなと心底思った。

「でも純喜くんが一番好きだよ」
「それは分かってるって」
「わかってるならいいけど」

「またさ、景瑚誘って肉とか食べ行こう」
「なんで肉？」
「肉食べたら人間元気になるやん」

愛おしい瞳で笑う純喜くんが私のそばにいてくれることが何よりも幸せだと厚い胸板に包み込まれながら噛み締めた。

類は友を呼ぶんだよ。

景瑚のまわりには優しい人だけがいて、温かい優しさだけを感じてほしい。

ばかみたいだけど、本当に思ってるよ。

だってたった1人の親友だもん。ねえ景瑚もそうでしょ。

.