11．光の波に溺れて ページ11
.
公園に行くはずだったのにあいにくの雨だ。
予定変更して水族館に行くことになった。
雨の日は前髪が崩れるからテンションが下がる。
瑠姫は魚介類が嫌いだから一緒に水族館に行ったことはなかった。
何度、一緒に行きたいといっても行ってくれなかった。
「Aちゃん！みて、ニモおるで」
「ニモじゃなくてカクレクマノミだよ」
「いや、知ってたよ」
「知らなかった〜って顔してるよ」
お土産ショップの近くでクラゲのガチャガチャを見つけた。
クラゲってゆらゆらふわふわしててかわいくて好き。
３回してもお目当てのミズクラゲは出なかった。
まだやるん？という純喜くんに
もう一回だけ！と言ったら子供やんと笑われた。
最後の一回でも欲しかったものは出なかった。
帰り道、天気予報では午後から晴れると言っていたのにまだ雨は上がっていなかった。
狭い傘の中に二人きり。
楽しかったと話す純喜くんの肩が触れる。
いつもより近い距離に緊張する。
「じゃあ、また大学でね」
「Aちゃん、これあげるわ」
水族館の小さな袋を開けると
ピンク色のクラゲのキーホルダーが入っていた。
「いいの？」
「ミズクラゲはなかったんやけど」
まるっこいフォルムとゆるい顔がかわいい。
大事にするねと顔を見上げると、照れた様子で自分の頭を触った。
改札に入って何度か振り返ると
純喜くんはいつまでもこっちに向かって手を振っていた。
貰ったキーホルダーを鍵に付ける。
もちもちした手触りが気持ちいい。
ふれあいコーナーで触ったヒトデの手触りを思い出すと未だにぞわぞわする。
触りたくないといった私の腕を掴んで
無理矢理触らさせられた。
怒っているのに
純喜くんが楽しそうに笑うからよくわかんなくなった。
途中、水槽に夢中になった純喜くんと暗い館内で何度もはぐれそうになった。
繋がれた右手を私から離すことはしなかった。
目が合うと純喜くんはいつも笑いかけてくれる。
.
12．ドーナツの真ん中から考える→←10．夜に滲むはあなたのまぼろし
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 959人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し96612号(プロフ) - コメント失礼します！いつもふふさんの作品大好きで密かに読まさせてもらってます！降り注ぐ幸福の下でが見たいのですが、友達申請してもよろしいでしょうか？ (2023年1月31日 23時) (
レス) id: 4a8c56b8ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふふ | 作成日時：2021年4月20日 16時
