照らすために息をしている (ページ31)

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30．甘すぎる砂糖は溶け切らないページ31

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友達と別れて帰る途中、駅前で絡まれている女の子がいた。

腕っぷしが強いわけじゃないし正直こういうのには関わりたくないな～と思いながら通り過ぎようとすると、困った顔ですみませんと何度も言う声に見覚えも聞き覚えもがあって足を止めた。

「A！何やってんの？」
「え？あ？木全くん？」
「なんだよ～待ち合わせってほんとかよ」

意外とすんなりと立ち去っていく男の後ろ姿を見送り、Aさんに視線を移す。
急に声をかけたせいでびっくりしている、純喜くんの彼女さん。

どさくさに紛れて呼び捨てで呼んじゃったな、純喜くんですらAちゃんって呼んでいるのに。当の本人はびっくりしすぎてそれどころじゃないみたいだけど。

「木全くんありがとう」
「ううん、なんか絡まれてるなと思ったらAさんでびっくりした」
「ありがとう、しつこくて困ってたの」

「純喜くんと待ち合わせ？」
「うん、電車遅延してるみたいで」
「明るいところで待たなきゃだめだよ」

困った顔のまま笑うAさん。

こんなに綺麗な人だったら声もかけるし、しつこくするよな～僕はナンパとかしないけれど、とかぼんやり考える。帰るタイミングを失い、世間話をしながら純喜くんを一緒に待っていると、ようやく後ろから元気な声が聞こえる。

「Aちゃんお待たせ」

「純喜くん遅いよ！！！！」
「なんで翔也おるん」
「Aさんが絡まれてるのを僕が助けたんですよ」
「え！そうなん？大丈夫やった？」
「うん、なんともなかったよ」

「あ〜もう本当に！Aさんをこんなところに待たせちゃダメじゃないですか！」
「ごめん」

「Aさん、純喜くんなんてやめて僕にしませんか？」
「おい！翔也！それは流石に許さんぞ！」

冗談に決まってるじゃないか、馬鹿だな河野は。Aさんが僕を選ぶわけがないじゃないか。そんな本気で怒ることないじゃないか。

現に僕が助けた後も不安そうに揺れていた瞳は純喜くんを捉えた途端、安心の色に変わった。

ヘッドロックをキメてくる河野純喜を見て、Aさんが楽しそうに笑ってる。

ここは笑ってないで助けてほしいな…Aさん…

「あ、これから飯行くけど翔也も来る？」
「え、悪いですよ」
「私は全然いいよ」
「本当ですか！行きます！純喜くんのおごりですよね！やった～寿司がいいです」
「はあ～～Aちゃん助けてくれたから特別な！」

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