第32話 ページ41
溢れ出る感情を押し殺し、声を振り絞る。
「な…んでそんな、怒ってるんですか…言ってくれなきゃ…わ、かんない、です…」
汚い泣き顔を晒しながら一生懸命気持ちを伝える。
涙を拭う隙間から一郎先輩の顔を見ると、焦っているような、何処か悲しげな顔が見えた。
いつもと違うけど、さっきの顔とも違う。
なんでそんな気まずそうな顔をするの?
私、先輩がどうして欲しいのかわからない。
すると先輩は私の頰を撫で、口を開く。
「その…ごめんな。泣かせるつもりじゃなかったんだ、なんていうか…その…嫉妬した…」
最後の言葉に唖然とする。
嫉妬…?一郎先輩が?嘘、絶対ない。
それでも涙は止まらない。
それを見て何度も謝る先輩。
ごめんなんて一度言ってくれたらもういいの。
そんなことしてる暇があったら抱きしめてくれればいいのに。
なんて思ってしまうのは流石に甘え過ぎなのだろうか。
まぁこんなこと口に出してないんだから先輩に伝わるはずはなく、自分から先輩の胸に飛び込む。
「私…先輩がわかりません…誰にでも優しくするのに、私には急に怖い顔するし…絶対に一線は越えようとしないし…美少女フィギュア下から覗いて「白か…」とか言ってるし…」
「……ごめ、ん?待て、最後のなんで例に出した?!」
「…………一郎先輩のばか、あほ…ケチ、すけべ…」
「…うん、悪かった」と強く抱きしめ返してくる先輩。
別に今回、先輩は悪くない。
もちろん私だって悪くない。
ちょっとしたすれ違いが生んだことだろう。
でも怖かったし、涙も鼻水もしゃっくりも止まらないし。
うえっ…ぐすっ…ひっ…なんて声を漏らしながら暫く先輩の胸の中で泣いた。
数分間泣いて、呼吸が整ってから先輩の胸から顔を上げる。
それでも先輩は私の腰に腕を回しているので距離は近い。
「ごめんなA…大丈夫か?」と頭を撫でてくる先輩。
そろそろ謝るのやめて欲しい。
今度はきちんと瞳を見て言う。
覚悟しろよ先輩、反撃の時間だ。
「あの、私が左馬刻と話してたところをあんなに取り乱して乱入したくらいですし、私のこと離したくないなら結婚してくださいよ!」
「そうだな……ん?いや待て待て待て!俺たちまだ二十歳にも未てないんだぞ?!それに段階ってもんがあるだろ!」
「できることならしたいけど…」なんて顔を赤くする先輩。
うわっ……顔がいい!!!
これもしかすると…押しに押せばいけるんじゃね…?
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松栗(プロフ) - こんばんは。夜分遅く失礼いたします。リクエストの品ができました。当作品内にて掲示しておりますので、ご確認をよろしくお願いします。 (2018年9月3日 0時) (レス) id: e52d1400cf (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬぬ(プロフ) - おけですー!!じゃあ続編の方で! (2018年8月27日 14時) (レス) id: 62aeac2e51 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌(プロフ) - ぬぬぬさん» 私は王道ですけどタクミくんとか…本推しは外伝のグレイくんです!ありがとうございます〜!!こっちは多分あまり来なくなるので、向こうの方が私としてはありがたいです…! (2018年8月25日 22時) (レス) id: 96d787d18f (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬぬ(プロフ) - 本当にそれ!!!乳酸菌さんは誰好き??あ!それと続編おめでとう!どっちでお話する?? (2018年8月25日 16時) (レス) id: 62aeac2e51 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌(プロフ) - ぬぬぬさん» 主人公ズですか!かっこいいですよね! (2018年8月22日 23時) (レス) id: 96d787d18f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乳酸菌 | 作成日時:2018年7月20日 1時