４ ページ5
.
こんこん、小さく扉を鳴らして中からの返答を待つ。
「 はい 」扉の奥から響いてきた美しい声に 背筋をしゃんと伸ばして、
「 失礼します 」
彼は 病室に入ってきた私を見て、さぞ嬉しそうに顔を綻ばせた。
真っ白で何もない病室に本の音が響いた。
白いレースカーテンが揺れて、外の青い空をのぞかせる。
向こう側に見える 東京とは思えぬ広大な海も、そう
__ 青い。
「 えいちせんぱい 」
「 なぁに？ 」
「 なに読んでるんですか？っていうか、急にきてごめんなさい 」
「 いや、いいんだよ。... 僕が読んでるのはね、う〜ん 。 」
ブックカバーがついたその本を、英智先輩は可愛らしく抱えた。
それで、口元に人差し指を寄せて 小さく首を傾げる。
クリーム色の髪が太陽の光をきらきらと反射させて さらりと揺れる。
真っ白な __ 宛ら陶器のような頬に柔らかく掛かって。
「 __ ないしょ 、」
なぁんて、言うんだ。
ずるいなって思ったのは心の中に秘めたまま ... 否、顔に出ていたのかもしれない。
英智先輩も頬を緩ませて、本を窓際のテーブルに置く。
その手で私に おいでおいで。
私が恐る恐る近寄れば 頭の上に細い手が乗って、ゆっくりと動く。
撫でる手付きはとても優しいもので。
とても心地が良かった。
「 少し、話そうよ。 」
「 もちろん、だいじょぶです、 」
「 ありがとう 」
長い睫毛をゆっくりと伏せた英智先輩の髪を、今度は私が撫で返した。
少し驚いたように目を見開いたけど、そんな英智先輩も新鮮で
彼のことを知れば知るたび、溺れて行った。
沼に、真っ暗な水底に。
足を引かれる、もう、戻れなくなる。
__ 溺れるとともに、真実を伝えるのが怖くなっていくんだ。
ごめんなさい、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「あんスタ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ＭｉｎＴ(プロフ) - さくやーさん» わわ、閲覧ありがとうございます (^-^) そう言っていただけて何よりです！！！ (2017年5月30日 9時) (
レス) id: 2b0d780a77 (このIDを非表示/違反報告)
さくやー - 読ませていただきました！！とても面白かったです！英智様最高です！ (2017年5月30日 1時) (レス) id: 5ce56128e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
