好き、嫌い、好き Ⅱ (ページ20)

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『疲れたら、また私を飲みに誘ってよ。奢ってくれるなら、愚痴くらい聞いてあげる』

私がそう言うと、彼は下げていた顔を上げた。
勇人に“落ち込む”だとか“弱気”だとかいう言葉は、似合わない。

「‥ばかやな。」

ぶっきらぼうに答えた彼
根本的な性格は、酔っても変わらないらしい。

「でも、また飲みに誘ったる」

無邪気にあふれた笑顔に、きゅん、と胸が締め付けられるような高鳴るような

そんな気持ちになったのはお酒のせい。

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酔いを覚ますため、
タクシーを降りてから、マンションまでの50メートルの夜路をふたりで歩く。

『変な質問しても良い？』

「ん、」

『野球選手でも、野球するの嫌になることあるの？』

「‥‥あるよ。365日野球のこと考えない日はなくて、オフシーズンでも気持ちは落ち着かんこともある。野球やめたら、楽になるんやろうなって思ったりもする、」

“でも”

「今んとこ、辞めたいと思ったことはない。」

ストレートに届いた言葉
それはどこか嬉しかった。

“これは記事にしたらあかんで”
なんて冗談言って笑うから

『しないよ、スポーツ記者じゃないもん』

「ははっ、そやなー」

心のどこかで思う。
私は、

幸せ者だと。

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