13話 ページ13
.
見つめ合ったまま、数秒。
私の目に溜まった涙を親指で拭った先輩は、そのまま頬をツーっとなぞった。
従順な私。ゾク、と背筋が震えてあの時の感覚が蘇る。
頬を伝った指は首筋に移動し、ゾワゾワと全身が粟立つ。
それは嫌悪感などではなく、____甘い痺れだった。
私、トントン先輩の指1本でこうなっちゃうんだ、と何も言わない先輩の目にそっと視線を絡ませた。
「俺、弱いねんなぁ……その顔、」
困ったように弱々しくそう言った先輩は、私の顎をすくい上げるとそのまま唇を重ねた。
そのまま耳や顎に口付けられ、最後に首筋へと移動する。
「……ひっ、まって…っ、」
「弱いん？首」
なぞるように舌先が動き、出したくもない声が口から零れる。
それに応えるようにカプリと首の付け根に歯を立てられ、肩が跳ね上がった。
「ほんまにこういうの慣れとるん？演技…じゃないやんな、」
そりゃ、初対面の人とトントン先輩じゃ訳が違う。ショッピ君とトントン先輩でも同様に。
何が違うかは、明白だった。
「……慣れて、ないです、」
好きな人と、それ以外。
好きな人に触れられることは、例え同じ事をしていたとしても快楽の度合いが桁違いだった。
ていうかもう、好きって認めてるじゃん、私。
「合コン連敗なんやってな？」
「……今その話します？」
「いや？俺より好きな男に出会えたんかなぁと思って」
出会えてたら、今先輩の下で馬鹿みたいに顔を赤くしていない。
会えなかった数年分触れて欲しい、なんて思ってない。
だけど、私はもうそんなことを言える立場じゃない。
「……好きって言うてくれへんの？」
「…………、」
「ふぅん、憎たらしくなったもんやなぁ…誰に似てん？」
妬けるわ、と口角を歪めた先輩は、再度深く口付けた。
.
お互いの呼吸音と私の嬌声だけが響くこの空間で、私の身体に舌先を這わせながら先輩はぽつりと呟いた。
「………彼氏は？できたことあった？」
「っへ、…なんで今そんなこと、聞くんですか」
お互い一糸まとわぬ姿のまま、それ今じゃなきゃダメでしたか、とデリカシーを疑う。
「ありますけど……1回だけ」
「……………へぇ」
地を這うような低い声と共にガリっと首に歯を立てられ、生理的な涙と声が洩れる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1290人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢月(プロフ) - 心臓がギュンってなりました対ありでした、、、 (2022年9月10日 6時) (
レス) @page17 id: 93204524cb (このIDを非表示/違反報告)
ニコチンキッド - とても好きすぎてスマホ叩きわりました (2022年6月28日 23時) (レス) @page17 id: 5ea514a864 (このIDを非表示/違反報告)
))k(( - めちゃくちゃに好きな神作品…っ (2022年3月12日 22時) (レス) @page17 id: 871e1d6cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ラビット_(プロフ) - かなり前に完結済みの作品様ですが、コメント失礼致します。わー！めっちゃ好きです！リクエストで申し訳ないんですけど、夢主ちゃんと付き合ってた時の紫の後輩くんのこととか知りたいです…！この作品一気にお気に入りになりました…もう好きです… (2021年7月10日 20時) (レス) id: bc77977d93 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 以前の作品にコメント失礼します。前作から一気に拝見させて頂きました。切ないストーリーだけど、それだけじゃなくクスッと笑える部分も多く、高校卒業後のすれ違いが最高に好きでした…。本当にこれ以上の作品に出会える気がしません；； (2021年5月23日 8時) (レス) id: 6c6ea452a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年2月4日 23時
