11月 ページ12
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あっという間に11月に入り、冷え込む日が続いていた。
そして寒暖差からか、月半ばから彼女は熱にうなされぐったりとしている。
まともに食事も取れず、点滴による栄養補給と薬の投与で身体に沢山の管が繋がる彼女の姿は、思わず目を背けてしまう程だった。
病気の進行速度も彼女に慈悲はなく、とうとう自力で起き上がることも厳しい状態になり、手足にも上手く力が入らないようだった。
「…………A」
今日は雨模様だった。俺の呼び掛けにうっすらと目を開けた彼女は少し口を動かす素振りを見せたけれど、雨音より小さいその声は俺には届かない。
何とか聞き取ろうと、管をかき分け顔を近づける。読唇術なんて持っていないが、必死に彼女の口の動きに目を凝らした。
「………つくえの、なか」
掠れた声を振り絞る彼女は、確かにベッド脇の机の引き出しに視線を動かした。
俺は直ぐに引き出しを開け、そこに入っていた見たことも無い真っ白な封筒に書いてある文字を読み、一気に手先が冷たくなった。
『______私がいなくなったら読んでね』
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「っ……A、A……あかんよ、やめてや……」
いつ書いたのか分からないが、所々震えた文字は確かに彼女の筆跡で、『トンちゃんへ』と書いてあるそれを俺はもう一度引き出しの奥へとしまい込んだ。
自分の身体のことは自分が一番よく分かる、と言うが、彼女もそれを分かっていたのだろうか。
今年初め、彼女の担当医は俺にだけ彼女のタイムリミットを告げたが、俺はそれを彼女に伝えることはしなかった。
もしかしたら、彼女はそれを_______
ふと目をやると、もごもごと口を動かしている彼女。
もう一度耳をすませば、
「おねがい」「よんでほしい」
おねがい、おねがい、と何度も繰り返していた。掠れた声で、思うように動かない指先を懸命に動かして、俺にそう訴えていた。
もう一度引き出しを開け、それを胸にそっと抱く。
ごめんな、俺弱くて。Aがそないなっとるのに、何も出来ひん俺を怒ってくれ。いつもみたいに、眉を寄せて、拗ねた顔で……
「A…！っごめんなぁ…！」
涙でぐちゃぐちゃの顔で、彼女の手を握る。
もう握り返せる力も残っていない彼女は、ゆっくり俺の手を撫でた。
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夏のスイカ - 初コメ失礼します。見させてもらっています。めちゃくちゃ感動しました。とても悲しいけどいい物語だと思いました......両方とも来世でまた結ばれ元気に過ごしてるのを見てみたいですね。最高でした..。きっといつかこの2人がまた来世で会えたらいいな.長文失礼しました (2021年9月11日 10時) (
レス) id: b5169bd6bc (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - あ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ” もう無理、、、悲しすぎんよ、、、ちょっとこれはもう最高やわ、、、友達に布教する、、、友達wrwrd知らないけど、、、知らなくても普通に泣ける、、、最高ですわ、、、 (2020年5月26日 4時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - はじめまじでぇぇ！！！！ただいま泣きじゃくりながら読ませていただきました。絶賛号泣中でございますぅ！！いや、もー最高です(ﾉД`)4月位から涙目で読んでました。涙腺崩壊しますぅぅぅ取り敢えず好きです。（は？ (2020年5月25日 15時) (レス) id: ebc34290bc (このIDを非表示/違反報告)
鬱嶌。(プロフ) - 初めまして。読ませて頂きました、いつもなら泣かないのですが涙が出てしまいました。本当に本当に素敵な作品でした、手紙のところ、泣きながら書いたのかなとか考えるともっと涙が溢れて…他の作品も読ませて頂きます。これからも頑張ってください！応援しています、！ (2020年5月15日 2時) (レス) id: 38c66e0295 (このIDを非表示/違反報告)
ちべすな。(プロフ) - 作品、読ませて頂きました。読み終わる頃には、泣いてました。本当に素晴らしい作品でした。これからも応援しています！ (2020年3月29日 22時) (レス) id: 60661416db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年1月26日 23時
