10月 ページ11
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「トンちゃん、何か喋ってみて、」
1ヶ月後、彼女の耳には補聴器がついていた。
トンちゃんが近くで喋ってくれるから必要ない、の一点張りだった彼女も、俺がおらへん時に危ない目にあったら守られへんやろ、という少々無理矢理な理由に納得したらしく、むしろ少し嬉しそうにも見えた。
「Aー」
「わぁ…聞こえる、前と同じだ…」
「付けてよかったやん」
うん、と笑う彼女は「トンちゃんの独り言も聞こえるね」なんて珍しく元気そうにベッドの上ではしゃいでいた。
「言うてへんわ独り言なんか」
「えー、言ってるよ、『A超好き♡』って」
「それは独り言やなくてAに言うててんで？」
「えっ……ほんとに言ってたの？」
「言うかアホ」
ポンポンと進む会話が懐かしい。
彼女も久しぶりに具合が良さそうで、俺の声が聞こえているであろう補聴器を愛しげに指先で撫でていた。
「でも私、トンちゃんが近くで喋ってくれるの結構好きだったんだけど」
「別に喋って欲しいんなら近くで喋ったるよ」
「えー！なんて言ってもらおうかなぁ…」
ベッドの上で俺の手を弄びながら真剣な顔で考え込む。
「好きって言って」
「えぇ……それ言わなあかんの？俺」
「あ〜、私の事好きじゃないんだ〜…泣いちゃう」
わざとらしく泣き真似をする彼女。照れ臭さからため息をついて、ボソリと言う。
「……好きやって。知っとるやろ」
「んふふ、1番？」
「Aしかおれへんよ」
「えへ、両想い」
握った俺の手に唇を落とした彼女。
伏せられた目を見ながら、反対の手で頬を撫でた。
「Aは？言うてくれへんの？」
「私？…私はねー、重たいよ、すっごい」
「へぇ、そうやったん？」
「うん。…トンちゃんがいれば、何もいらない」
キュッと唇を噛んで、俺の手に頬擦りする。
まさに『いじらしい』という言葉がピッタリな彼女の仕草に俺はまんまと胸が高鳴ってしまい、彼女の顔前に流れた髪を避けてキスをした。
「俺かて同じやで。Aがおってくれるだけで幸せやねん」
彼女さえいてくれれば、ずっと隣にいてくれれば、もう他に望むものは何も無かった。
けれど、俺らの現実はそうはいかない。お互いそれは分かっていた。
いつ触れられなくなるか分からない、いつ好きだと伝えられなくなるか分からない。
だからこそ、会っている時はできるだけ手を握って、目を見て話していた。後悔だけはしたくない、そう思いながら。
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夏のスイカ - 初コメ失礼します。見させてもらっています。めちゃくちゃ感動しました。とても悲しいけどいい物語だと思いました......両方とも来世でまた結ばれ元気に過ごしてるのを見てみたいですね。最高でした..。きっといつかこの2人がまた来世で会えたらいいな.長文失礼しました (2021年9月11日 10時) (
レス) id: b5169bd6bc (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - あ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ” もう無理、、、悲しすぎんよ、、、ちょっとこれはもう最高やわ、、、友達に布教する、、、友達wrwrd知らないけど、、、知らなくても普通に泣ける、、、最高ですわ、、、 (2020年5月26日 4時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ナナシ - はじめまじでぇぇ！！！！ただいま泣きじゃくりながら読ませていただきました。絶賛号泣中でございますぅ！！いや、もー最高です(ﾉД`)4月位から涙目で読んでました。涙腺崩壊しますぅぅぅ取り敢えず好きです。（は？ (2020年5月25日 15時) (レス) id: ebc34290bc (このIDを非表示/違反報告)
鬱嶌。(プロフ) - 初めまして。読ませて頂きました、いつもなら泣かないのですが涙が出てしまいました。本当に本当に素敵な作品でした、手紙のところ、泣きながら書いたのかなとか考えるともっと涙が溢れて…他の作品も読ませて頂きます。これからも頑張ってください！応援しています、！ (2020年5月15日 2時) (レス) id: 38c66e0295 (このIDを非表示/違反報告)
ちべすな。(プロフ) - 作品、読ませて頂きました。読み終わる頃には、泣いてました。本当に素晴らしい作品でした。これからも応援しています！ (2020年3月29日 22時) (レス) id: 60661416db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年1月26日 23時
