33話 ページ33
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急いで誤解を解き身の潔白を説明する。ケンちゃんに説明してる体だけど、もう9割は先輩に向かって言っているようなものだ。
ケンちゃんにショッピ君との仲を誤解されるのは最悪良いとして、トントン先輩に誤解されるのは死活問題すぎる。営業妨害だ。
それからケンちゃんは先輩に売れるだけ喧嘩を売ったあと、私に手を振って去っていった。本当になんの用だったんだろう。
半ば条件反射で手を振り返した時、またグイッと腕を引っ張られ、私を引きずって図書室へと歩を進める先輩。
そして図書室の扉を勢いよく開き私を中へ押し込むと、そのまま勢いよく扉を閉めた。
私、殺されるのでは?と本気で思ってしまうほど、誰がどう見てもキレ散らかしている先輩を恐る恐る見上げる。私にご慈悲をください。いや、これ私悪くないよなぁ…。
「……あ、あの」
沈黙に耐えきれなかった私は口を開いたけれど、上ずった変な声が出たので慌てて咳払いで誤魔化す。
こういう時になんて言えばいいのか、学校はそういう事を教えるべきだと思う。
「すみません……ケンちゃんが失礼な事言って」
まずは謝罪。とりあえず謝罪。
先輩がどの言葉に怒ってるのかは分からないけど(多分全部)、ケンちゃんの代わりに私が頭を下げた。理不尽を感じる。
そして頭上から聞こえたのはため息。
そして一言。
「………うるさいねん」
あぁ神様、どうして私がこんな目に。
文字通り「うるさいねん」という顔で私を見る先輩に心の中で訴える。私が悪いですか!?怒りの矛先違くないですか!?
心の中なのでそれは先輩には届かず、私はただむくれて床を睨みつけることしか出来ず。
そんな私に、先輩はもう一度呟いた。
「うるさいねん……ケンちゃんケンちゃん、て」
「……へ?」
「せやから、Aが好きなんは俺なんやろ?じゃあ他の男の名前とか呼ぶなや」
「え………そういう?」
「他に何があるん?言うてみぃ」
じゃあ、先輩は最初からケンちゃんなんて眼中に無く、ただ自分以外の男の名前を呼ぶ私に怒っていたと。
「さすがに理不尽が過ぎると思うんですけど!」
「なにがやねん?」
「えぇ!?だって、先輩って私の事の好きじゃないんですよね」
「好きとは言うとらんで」
「それ!それが理不尽だって言ってるんです!」
確かに特別だと言ってくれた。でも好きとは言われてない。つまりまだ両想いと言うわけではない。
なのにこの言われよう、今どき付き合っていてもなかなか無いのではなかろうか。
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美雨 - この作品お気に入りすぎて5回くらい見ました、、、()本当に素敵な作品できゅんきゅんしまくりです!!!最後の言葉がぐっと来て本当に泣きそうになりました。素敵な作品ありがとうございました。 (2023年1月7日 17時) (レス) @page50 id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆ - はぅ、、、、、とんとん、、、、、ちゅき、、、、、 (2020年9月28日 11時) (レス) id: f773b15172 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - 初コメ失礼します…あー!!!!!甘酢っぺぇ!会社の方見てからこっち来たんですけどどっちも甘々なのになんか、両方とも違う甘々でくっときました…天才ですか…好きです。長々と失礼いたしました…これからも応援しています…! (2020年7月13日 6時) (レス) id: 57a2a5c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もうなんか今順番に読んでるんですけど必ずと言っていいほど泣くんですけど、え?tn氏かっこよすぎん?好き。 (2020年5月26日 3時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 初コメ失礼します!もう感動しすぎて泣いちゃいました........ (2020年5月13日 17時) (レス) id: a7dcf8f420 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2019年12月31日 0時