20話 ページ20
.
「ごめん…Aちゃんが先輩のこと好きなのは知ってたけど、どうしても言いたくて」
「や、うん……それは全然、」
しどろもどろ。ただでさえ何も考えられない徹明けの頭が更に思考を閉鎖させる。
ケンちゃんは私が好き。でも、私はトントン先輩が好き。これって断る理由になるのかな。
言い出しずらく口をもごもごさせていれば、ケンちゃんは私を見てクスリと笑った。
「大丈夫、聞いてもらいたかっただけだから。ごめんね、考えさせて」
「う、ううん私こそ。でも、四徹明けには刺激が強いよケンちゃん」
「はは！そうだった。テストも爆死してるし」
「掘り返さないで！？」
慌ててそう言えば、もういつもの調子のケンちゃん。
忘れかけてたけど、英語の結果は惨憺たるものだった。
時間が経ってじわじわとその事が現実味を帯びてきて途端に気持ちが沈んだ。
先輩のラインゲットできなかった…私は一体何のために四徹したんだ…
本来この状況で落ち込むのはケンちゃんのはずなのに、逆に心配される私。立場逆転。
「んー…なんて言っていいか分かんないけど…元気出してよ、」
「ありがと…でもちょっと厳しい…」
「俺Aちゃんが元気な方が好きだよ」
「……あ、ありがとう」
言われなれない言葉にぎこちなく返すと、余裕の笑みを返され思わずソロりと目を逸らす。
私が好きって言った時、先輩もこんな気分なのかな。
先輩を困らせているという自覚はどこかあったけど、優しい先輩に甘えてそこまで深く考えていなかった。
でも、実際自分が同じ立場に立ってみてはっきり分かる。
正直、めちゃくちゃやりずらい。すごく困る。
意識してない人からの好意の言葉。それは確かに私の中で困惑を生んだ。
「Aちゃん？どうかした？」
「う、ううん。ちょっと眠気が…あはは、」
「あ、そうだよね…ごめんね引き止めて。俺らも帰ろっか」
リュックを担いで席を立つケンちゃん。そのまま教室を出ずに私をじっと見ている。
……まじですか、一緒に帰る流れですか。
クラスメイトと一緒に帰るだけ、何も難しい事は無い。の、はずなのに、私は何故か重い腰が上がらない。
……私が一緒に帰りたいって言った時、先輩もこんな気分だった？
モヤモヤとした気持ちを悟られないようスっと立ち上がろうと足を踏ん張れば。
「ぁ……っ、」
立ちくらみ、そう思った時にはグラりと景色が反転し、私はそのまま意識を手放した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美雨 - この作品お気に入りすぎて5回くらい見ました、、、()本当に素敵な作品できゅんきゅんしまくりです！！！最後の言葉がぐっと来て本当に泣きそうになりました。素敵な作品ありがとうございました。 (2023年1月7日 17時) (
レス) @page50 id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆ - はぅ、、、、、とんとん、、、、、ちゅき、、、、、 (2020年9月28日 11時) (レス) id: f773b15172 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - 初コメ失礼します…あー！！！！！甘酢っぺぇ！会社の方見てからこっち来たんですけどどっちも甘々なのになんか、両方とも違う甘々でくっときました…天才ですか…好きです。長々と失礼いたしました…これからも応援しています…！ (2020年7月13日 6時) (レス) id: 57a2a5c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もうなんか今順番に読んでるんですけど必ずと言っていいほど泣くんですけど、え？tn氏かっこよすぎん？好き。 (2020年5月26日 3時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 初コメ失礼します！もう感動しすぎて泣いちゃいました........ (2020年5月13日 17時) (レス) id: a7dcf8f420 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2019年12月31日 0時
