14話 ページ14
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それからというもの、必死に漱石の勉強をした私。『こころ』の悲しすぎる内容に私の心の方が潰れかけそうだったけど、何とか持ち堪えて一週間後。
今日は迎えた小テストの日。
並行して数学や英語の補習をこなしながらも、何とか話の内容は理解出来た。
斜め前に座るケンちゃんと互いにガッツポーズを送り合い、いざ小テスト。
結果は____
「Aちゃんおめでとう、よく頑張ったわね」
「うわぁぁぁ!ありがとう漱石!」
8点。ギリギリ合格ラインに乗り、晴れて国語の補習は卒業となった。ちなみにケンちゃんも合格したらしい。
みんなそれぞれ喜びながら、或いは落胆しながらバラバラと教室から出ていく中、私も勝利と漱石の余韻に浸りつつ、ふと考える。
先輩に、合格したって言いに行きたい。
一週間頑張ったこと褒めてもらいたい。
座右の銘は思い立ったら即行動。テスト用紙を片手にフラフラと校舎を巡り歩いた。
そもそも今日先輩が学校に居るかどうかわからないけど。でもどうしても会いたい。だって、今日で2週間弱会ってない。
そんな思いだけで3年生の教室を見て回ったけれど、トントン先輩は見当たらなかった。
今日は来ていないのかも。肩を落として踵を返し、階段をとぼとぼ降りる。
つい先程まで歓びに満ちていたのに、先輩に会えないだけでこの有様。
『こころ』のように、私に恋敵が居なくて良かった、と漱石の余韻に打ちひしがれながら進路指導室の横を通り過ぎようとした時。
「あ、A。久しぶりやな」
「っ!?先輩!本物ですか!」
「へぇ、俺の事好きなくせに見ても分からへんねや」
「分かります!自 殺考えるくらい好きです!」
パァァァっと効果音が出ているのではなかろうかと言う程の満面の笑みがついこぼれる。
進路指導室の扉を後ろ手に閉めつつこちらに歩み寄って来てくれる先輩に、うっかり漱石の余韻をぶちまけた。
「なんやねん自 殺て、急にえらい不謹慎やなぁ」
「あ、すみません。漱石に毒されているんです今」
「漱石?……あぁ『こころ』な、」
自 殺、漱石、というワードだけで『こころ』が出てくるなんて、本当に同じ人間なんだろうか。
頭の作りを根本から見直していれば、先輩がククッと笑う。
「2週間ちゃんと補習頑張っとったん?」
「んふふ…先輩見てくださいこれ!」
得意げに合格の小テストを先輩の目の前に広げた。
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美雨 - この作品お気に入りすぎて5回くらい見ました、、、()本当に素敵な作品できゅんきゅんしまくりです!!!最後の言葉がぐっと来て本当に泣きそうになりました。素敵な作品ありがとうございました。 (2023年1月7日 17時) (レス) @page50 id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆ - はぅ、、、、、とんとん、、、、、ちゅき、、、、、 (2020年9月28日 11時) (レス) id: f773b15172 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - 初コメ失礼します…あー!!!!!甘酢っぺぇ!会社の方見てからこっち来たんですけどどっちも甘々なのになんか、両方とも違う甘々でくっときました…天才ですか…好きです。長々と失礼いたしました…これからも応援しています…! (2020年7月13日 6時) (レス) id: 57a2a5c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もうなんか今順番に読んでるんですけど必ずと言っていいほど泣くんですけど、え?tn氏かっこよすぎん?好き。 (2020年5月26日 3時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 初コメ失礼します!もう感動しすぎて泣いちゃいました........ (2020年5月13日 17時) (レス) id: a7dcf8f420 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2019年12月31日 0時