答え合わせ ページ24
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それからどうやって会社を出て、どうやって家に帰ったのか記憶も曖昧で。
ぼんやりしていた私は、会社から3駅分離れた自宅まで歩いて帰ったらしい。
大嵐の中、傘を差すことも忘れて。
濡れた服も濡れた髪もお構い無しにベッドに倒れ込み、そしてそのまま朝を迎えた。
「……あだまいだい、」
翌朝7時。強烈な頭痛と倦怠感に襲われ目が覚める。
当然ながら風邪を引いたらしい。
そもそも到底仕事に行けるようなモチベーションでも無かったので、これ幸いとばかりに鬱に今日は休むと連絡を入れようと、バッグに入れっぱなしにしていた携帯に手を伸ばした。
「…?なにこれ…、」
と、覗いた画面には大量の不在着信。それも鬱から。
不審に思いながらも一番最初の通知をスライドして、電話をかけ直した。
「もしも、」
『A!やっと出た!』
ワンコールで繋がった電話、食い気味に発せられた鬱の声が頭に響く。
『トンちから全部聞いたで。 俺のせいやんなこれ』
「え?いや、鬱は関係ないけど…」
そりゃあの手紙は鬱宛てだけど、トンちゃんに嫌われたことに鬱は関係ない。
それにしたって、男を手玉に取るのが上手いって言われる意味もわからないけど。
『ちゃうやん。俺宛の手紙預かってたんやろ?』
「え?あ、知ってたの?」
『その後輩が確認しに来てん。Aから手紙もらったかって』
やばい、後輩にドヤされる、と風邪の寒さとは違う寒気が背中を伝う。
『俺それ全然知らんかったからなんのこと?って感じやってんけど、その手紙に自分の名前書き忘れてたんやって、その子』
「…え?それって、」
『そのまさかやで。トンち、Aが俺にラブレター渡すつもりやって勘違いしててん』
するりともつれていた糸がほどける感覚がした。
昨日、どことなく会話が噛み合わなかった気がしたのはそのせいだったのか。
確かにトンちゃんからしてみれば、思いっきり鬱宛てのラブレターを落として焦っている私としてうつっていただろう。
お幸せにって、そういう意味だったんだ。
『トンち、なんも知らんと酷いこと言ったって謝っとった』
「や、仕方ないよ、」
だけど、ちゃんと自分の口で誤解を解かないと。
トンちゃんに嫌われてしまったのは理由も分からないからどうしようもないけれど、とにかく説明しなきゃ。
私が好きなのはトンちゃんなんだって、ちゃんと言わないと。
鬱との電話を切り、熱で朦朧とした頭でそう考えた。
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林檎(プロフ) - え、これも神作品ですね。tnちゃん可愛すぎかよ。 (2020年5月26日 2時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - おいちこさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます;;最新作以外全て完結済ですので、ぜひ覗いて見てください( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年2月5日 17時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ - こんなに面白いの読んだことないわ...!めっちゃ最高でした!神作品ありがとうございますぅぅっっ!!トントンさんのこともっと好きになりました。他の作品も読ませていただきますね! (2020年2月5日 16時) (レス) id: 5e1cddc80f (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - しゅなさん» プロ結果頂き光栄です(涙)こちらも覗いてくださりありがとうございます!連載中の作品もお楽しみいただけたら幸いです( ´ ` *) (2020年1月1日 21時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
しゅな - はいプロ、神。これは…鼻血だらだらですわ。とんち可愛ええ!+イケメン!…は?…僕もう…昇天したんやけどwww (2020年1月1日 19時) (レス) id: e68f489c1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2019年12月20日 22時