すれ違う ページ23
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「……ない、」
コピー用紙を取りに行った倉庫の前、階段、オフィス前の廊下。
その日の夕方、今朝通った道を探して回るも、手紙どころかゴミひとつ落ちていなかった。
もう最後の望みで、落し物として届いていないか確認してこようか…と、かれこれ定時から1時間たった時計を見ながらそう考える。
今朝見た後輩の笑顔を思い出し、罪悪感と焦燥感に押しつぶされそう。
腹を括って1階の受付へと足を向けたとき。
「探し物ってこれやんな？」
「っ！それ！」
いつの間にか真後ろに立っていたのはトンちゃんで。
その手には、まさに私が捜し求めていたピンク色の手紙があった。
そうか、トンちゃんが拾ってくれていたんだ。
ほっと胸をなで下ろし、お礼を言って受け取ろうと手を伸ばす。
「大先生に彼女おるって、嘘やってんな」
「っ、え？」
ボソリと呟かれたあまりに低い声に思わず伸ばした手を引っ込めた。
……え？怒ってる？どうして？
聞いたことのないくらいの冷たい声色に頭はクエスチョンマークでいっぱいで、とにかく何か言わないと、と口を開く。
「えっと、その手紙の事なら……鬱はそういうの、彼女がいても受け取るタイプだから、」
便箋にも入れられていない2つ折りの手紙は、恐らく内容もトンちゃんに丸見えだったんだろう。他者に見せてしまったことを心の中で後輩に再三度詫びた。
「この手紙渡しに行くつもりやってんな？大先生に」
「あ、そうなの。今朝落としたみたいで丁度探してて…」
助かったよ、と顔を上げれば、キュッと口を噤んで眉間にシワを寄せているトンちゃん。
それは、怒っているというより、傷ついたような表情だった。
「………そうなんや、見つかってよかったな」
「トンちゃん？ あの、どうかした？」
「別に何もあらへんよ。Aちゃんは男手玉に取るん上手いなぁと思っただけやで」
「っ、は？」
突然の言葉に驚いてトンちゃんを見れば、はい、と手紙を手渡される。
「じゃ、頑張ってな。……お幸せに」
「ちょ、ちょっと待って！トンちゃ……」
クルッと背を向け歩き出すトンちゃん。聞こえているはずなのに、私の言葉に振り向くことも遂に無かった。
男を手玉に取るのが上手い？お幸せに、ってどういう意味？どうして急にそんなこと言うの？
疑問符だらけの頭でただ呆然とその場に立ち尽くす私は、『トンちゃんに嫌われてしまった』という事実だけが理解出来てしまい、朝から降り止まない雨の中で1人涙を堪えた。
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林檎(プロフ) - え、これも神作品ですね。tnちゃん可愛すぎかよ。 (2020年5月26日 2時) (
レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - おいちこさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます；；最新作以外全て完結済ですので、ぜひ覗いて見てください( ´ ` *)コメントありがとうございました！ (2020年2月5日 17時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ - こんなに面白いの読んだことないわ...！めっちゃ最高でした！神作品ありがとうございますぅぅっっ！！トントンさんのこともっと好きになりました。他の作品も読ませていただきますね！ (2020年2月5日 16時) (レス) id: 5e1cddc80f (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - しゅなさん» プロ結果頂き光栄です(涙)こちらも覗いてくださりありがとうございます！連載中の作品もお楽しみいただけたら幸いです( ´ ` *) (2020年1月1日 21時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
しゅな - はいプロ、神。これは…鼻血だらだらですわ。とんち可愛ええ！＋イケメン！…は？…僕もう…昇天したんやけどｗｗｗ (2020年1月1日 19時) (レス) id: e68f489c1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2019年12月20日 22時
