その理由 ページ16
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先程のトンちゃんの言葉を噛み砕いて反芻させていると、トンちゃんはポツポツと話し始めた。
「Aちゃんてさ、大先生と仲良いやん?」
「まぁ…そうだね」
鬱とは長い研修時代を一緒に過ごし、なおかつ配属先まで偶然同じという長い付き合い。ここまで同じ時間を共有すれば、仲が深まるのも必然で。
「それは分かるねんけど、シャオさんとか俺は別棟やったし、そんな話す機会も無かったやん」
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「でもなんか知らん間にシャオさんとも仲良うしてたみたいやし」
僕だけ疎外感感じますわ、と冗談ぽく呟き、ふい、と目を逸らしたトンちゃん。
いつか見たようにほんのりと顔が赤く染まっていて、私の思考はNow Loading状態。
「いや、……だって、」
トンちゃんはその2人とはそもそも立っている土俵が違うというか。説明しようにもムードやらタイミングやらがあまりにも整っていないので、もごもごと言葉を濁す。
「……なんかすまんな。 多分深夜テンションやねん、できれば忘れてくれ」
「いや……ちょっともう遅い、」
というより、上手いこと話をそらされた気がするのですが。さっきの発言は一体どのような意味だったのでしょうか。
………期待、しますけど。
チラリと顔を上げると、赤い顔のまま私をじっと見つめるトンちゃんと目が合う。先輩達は、まだ帰ってくる気配もない。
トンちゃんと目が合ったまま動けず、
「……あの、」
「……Aちゃんてよく俺の事見てるよなぁ、」
「え、」
「最初は気の所為やと思っとったけど、気の所為じゃないやんな?」
悪戯っぽい笑みで私に詰め寄るトンちゃん。口パクで交したあの時の会話を思い出して自爆した私は、詰め寄られた距離分だけ身体を引いた。
「それってさ…なんか理由があるん?」
「………理由、?」
「分からへんの?仕事中もずっと俺の事見とる理由やで」
まるで人が変わったようにつらつらと言い立て、真っ直ぐ私を見ているトンちゃん。
「………それ、は、」
何か言わないと、と口を開いた私。
と、その時。
「おーいトントン! 女の子呼んでるけど、彼女か?」
扉を開けて入ってきた先輩に弾かれたように身体を向けたトンちゃん。
「あぁ、すんません。 すぐ行きます、……彼女じゃないっす」
まるで何事も無かったかのようにクルリと私に背を向けたトンちゃんは、真っ直ぐ扉へ向かって歩き出した。
直感的にスミレさんだろうな、とぼんやり思いながら、つくづくタイミングの悪い自分に唇を噛み締めた。
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林檎(プロフ) - え、これも神作品ですね。tnちゃん可愛すぎかよ。 (2020年5月26日 2時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - おいちこさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます;;最新作以外全て完結済ですので、ぜひ覗いて見てください( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年2月5日 17時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ - こんなに面白いの読んだことないわ...!めっちゃ最高でした!神作品ありがとうございますぅぅっっ!!トントンさんのこともっと好きになりました。他の作品も読ませていただきますね! (2020年2月5日 16時) (レス) id: 5e1cddc80f (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - しゅなさん» プロ結果頂き光栄です(涙)こちらも覗いてくださりありがとうございます!連載中の作品もお楽しみいただけたら幸いです( ´ ` *) (2020年1月1日 21時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
しゅな - はいプロ、神。これは…鼻血だらだらですわ。とんち可愛ええ!+イケメン!…は?…僕もう…昇天したんやけどwww (2020年1月1日 19時) (レス) id: e68f489c1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2019年12月20日 22時