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北は計画性のない行動を嫌う。それなのに今、自身の手によって腕の中に収まるAは正に北の後先を鑑みない衝動的なそれがもたらした結果だった。
｢…なんや、信介くん試合後いつも彼女にこんなんすんの？意外と情熱的な男やねんな｣
｢………、一回もしたことない｣
先程試合に負けた稲荷崎の主将が会場ロビーで女を抱き締めている。おおよそそんな目で通り過ぎる人がまじまじとこちらを見ている事に北は気づいていたものの、今はそれを繕う余裕など存在しない。北がぼうっとこちらを見たまま顔を逸らさないのでAも様子のおかしい北に少々の困惑を残しながらもその顔を見つめ続ける。
…と、Aは次の瞬間目を丸くさせる。
｢え！？ちょ、何泣いてん！えらい時差やん、｣
ぶわりとあっという間に瞼淵に溜まった北の涙はぼろぼろと堰を切ったように溢れ出し、あまりに突然の出来事にAは慌てて身体を離しハンカチを探し当て北へと手渡す。
｢…我慢してたん？キャプテンやもんな、ちゃんとしなって思てたんやろ。けど何事も溜め込むんは身体に良くない｣
｢ちゃんと…か。Aが今、ここにおらんかったらちゃんとやれてた。…なぁ、なんでこんなとこおんの…ここ東京やで？俺聞いてへんよ。なんで、…なんで？俺今、頭ん中ぐちゃぐちゃや…｣
｢もぉ。溜め込むな言うたけど泣きすぎや。私に会えて嬉しんは分かったからちょっと落ち着き｣
試合後から熱く胸を焦がしていたそれが涙となって北からゆっくりと吐き出されていく。ぽんぽんとあやす様に北の頭へ手を伸ばすAの肩に顔を埋め、北はまた泣いた。やり場も無く胸に蟠っていた熱さと痛みが徐々に溶かされていく。埋めたAの肩口からは甘い香りがした。懐かしいその香りにあてられ何故かまた涙が込み上げて、それを逃がすまいと北は縋るようにAの背中に腕を回した。
｢よぉ頑張ってたな。バレーの試合なんて初めて見たけど、こういうんがいい試合やったって言うんや思た。信介くん、かっこよかったで。ちゃんと最後まで主将やった。あんたがちゃんとした背中見せてたから他の人らは素直に悔しいて言えたんや。せやから今は、あんたが悔しいって吐き出す番やろ｣
Aの言葉はいつだって心地がいい。真っ直ぐ刺さるそれはブレない北を乱して時に頭を悩ませる。その乱れが嫌悪すべきものでは無いことを、北はもうとうの昔に知っている。
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rry - 最高すぎます、、、表現もヒロインや北くんのキャラクターが大好きです、 (2021年11月14日 21時) (
レス) @page37 id: 7243f08c85 (このIDを非表示/違反報告)
間 - このお話の北さんやヒロインの考え方や言葉選びがとても好きです。贅沢を言えば文章が詰めすぎていて読みにくかったかなと。もう少し文章との間隔を空けていればとても素晴らしいです。 (2021年7月22日 17時) (レス) id: c2c5a94e17 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 悪者さん» 悪者様コメントありがとうございます！悪者様の善逸君のお話とても面白かったです…！こちら読んでいただけで光栄です(;_;)完結までお付き合い頂ければ嬉と思います( ´ ` *)ありがとうございました。 (2021年6月27日 8時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
悪者(プロフ) - このお話大好きです！更新頑張ってください！応援してます！ (2021年6月27日 2時) (レス) id: 7f9fad3ad1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - osmさん» コメントありがとうございます(;_;)是非完結までお付き合い頂ければ幸いです( ´ ` *) (2021年6月26日 23時) (レス) id: 4397bbbd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2021年6月19日 15時
