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そしてそれから数週間後。
「はいAちゃん、これ」
「………、なに？これは」
なんでもない休日の朝、目玉焼きを半分に割っていた私に差し出された高級感漂う白い紙袋。
筆記体で英語が書かれたその紙袋を恐る恐る覗き込めば、小さな四角い箱が2つ。
「え？……あの、こういうのって、そうやって渡すもの…？」
「あ、やっぱり出して指に直接はめたりするもん？」
いや知らないけど…とそういう経験のない私は口ごもる。が、映画やドラマの知識で思い描いていたそのシチュエーションとは明らかに違いすぎる現実は、目玉焼きをお皿に移す私を含めてあまりにも日常のひとコマすぎた。
ムードや雰囲気なんて知ったこっちゃないという態度のトントンくんを何も言えずに眺めていれば、ゴソゴソと紙袋を探っている。
「ほら、手出し」
「あ、やってくれるんだ」
「Aちゃんにガッカリされてもうたら婚約破棄されるやん」
身震いするトントンくんに青くて若い女ですみませんと肩を竦めてそっと左手を差し出す。
「なんて言えばええんやろ、前置きとか必要か？」
「いや、いいから」
ブツブツ呟くトントンくんを若い私は急かす。「これから毎日Aちゃんの作った味噌汁が飲みたいんや」とベタすぎるプロポーズの言葉を呟きながら薬指に押し込まれた、サイズぴったりの指輪。
「ていうか、毎日飲んでるよね。味噌汁」
「せやな、なんなら5年前から味知ってた」
キラキラと光るそれを眺めながら、照れ隠しのそんな指摘をする。
私の手に添えられたトントンくんの薬指にも指輪が光っていて、2つ並んだそれは日常的だった私達の空気を不意にスルッと非日常に変えた。
「なんか、やっとやな」
「待たされました」
「うん…ありがとう、待っとってくれて」
お揃いのそれを着けた指先を絡め、私に微笑むトントンくん。
そして、不意に見せる真剣な表情。
「絶対幸せにする。あとめっちゃ愛してる」
「きゅっ、急になに、」
「急やないで。常に思っとるけど言えへんやん、いつもは」
たまには言うたろ思って、なんて得意げなトントンくんをじとりと見上げる。
「で？Aちゃんは？」
好き？俺んこと、なんてグイッと顔を寄せるトントンくん。
「…………むかつくくらい好き、」
「ふは！怒らんでや」
自信満々な顔に向けて呟いた私にもう一度「愛してる」と言ったトントンくんは、その暖かい腕で強く私を抱きしめた。
【彼氏はゲームがお仕事です】
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yuriori12911(プロフ) - 感情移入しすぎて号泣しました。めっちゃ良かったですありがとうございます！ (2021年7月19日 17時) (
レス) id: 83dc3f3be9 (このIDを非表示/違反報告)
Ono - ヤバいtnさんと主人公ちゃんの様子がすごすぎる良いな僕も結婚したいなあ 少し遅いけど完結おめでとうございます 何年も誰も感づかないって逆にすごいな 面白かったです (2021年7月1日 21時) (レス) id: 349a20a4df (このIDを非表示/違反報告)
亞代(プロフ) - 初めまして。完結までお疲れ様でした！ リア設定での会話運び、ネタの進み、言葉選びまでどれも好きで好きでたまりませんでした。素敵な小説に出会えて本当に嬉しかったです。丁寧な文章に一読惚れ？してしまいました。過去作品を拝見しこれからも楽しませて頂きます！ (2021年5月31日 23時) (レス) id: ffc410049a (このIDを非表示/違反報告)
TAMA(プロフ) - 完結ありがとうございました。お疲れ様です。いつもはtnさんに振り回される主人公だったのが、今作は逆も見れてそれも凄く良かったです。二人とも可愛くて…！！ (2021年5月31日 16時) (レス) id: a53139177d (このIDを非表示/違反報告)
碧翔 - 更新停止になった時に、「完結しないのかな」とか思っちゃいました。でも、ランキング見て「あれ、更新ある！？」とか思って帰ってきました。完結おめでとうございます！新作待ってますね。 (2021年5月30日 22時) (レス) id: 0e1788e627 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2021年2月16日 20時
