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それを言うタイミングだけで言えば腐るほどあったような気もするが、単純に私がそれを切り出す勇気がなかった。そのくせ別れを告げる勇気はあったことを誰か褒めて欲しい。
例えば今、こうして向かい合って座っているこの瞬間も、言おうと思えば言えるのだけれど。
「Aちゃん最近ぼーっとしとんな」
「うーん…恋の悩み」
「なに？他に若い男見つけたん？」
「見つからない……」
「ふ、探しとんか」
件の茶番が終わってからも私は相も変わらず彼の家に通い続け、家に行けば決まって夕飯を作って2人で食べるのがルーティンだった。
でも、彼の胃袋までは掴めても結婚への意志は掴めないらしい。技量が足りないのか。
彼の好物だけを作り続けて早5年、気づけば私の得意料理は彼の好きなメニューで埋まり尽くし、彼の家の台所もほとんどが私の手癖の配置と私好みの調理器具になっていた。
「卵切れそうだったよ」
「あー…明日買い物行かれへんねんなぁ」
「私明日買ってこようか？」
「ええの？んじゃ今日泊まってき」
うん、と返事をしつつ、なんだかなと頭を巡らせる。
別にいいんだけど、こう、会話が所帯染みてるというか、なんのときめきもない訳でもないけど、慣れが故に距離が近すぎるというか。
周りの友達のとこのカップルってこんなだったっけ？と定期開催される友達との女子会での会話を思い返していれば、不意にトントンくんが口を開く。
「…あ、せや。明日22時からちょっと集まらなあかんねん」
「明日？いつも金曜じゃなかったっけ？｣
「あぁ、それもあんねんけど…また別件で」
きっと不定期にしてるらしい生放送とやらの類だろうなとそれほど気にせず分かったと頷く。
それなら明日は22時までに帰ろう、と頭の中でぼんやり考えていればそれが顔に出ていたらしく、「別に気にせんでええのに」と呟くトントンくん。
毎回気にせずいてくれていいと言って貰えるけれども、なんせ私は万が一に怯えているのだ。それに、その万が一が起きてしまった場合私よりトントンくんを困らせてしまうから、それは避けたかったのだ。
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yuriori12911(プロフ) - 感情移入しすぎて号泣しました。めっちゃ良かったですありがとうございます！ (2021年7月19日 17時) (
レス) id: 83dc3f3be9 (このIDを非表示/違反報告)
Ono - ヤバいtnさんと主人公ちゃんの様子がすごすぎる良いな僕も結婚したいなあ 少し遅いけど完結おめでとうございます 何年も誰も感づかないって逆にすごいな 面白かったです (2021年7月1日 21時) (レス) id: 349a20a4df (このIDを非表示/違反報告)
亞代(プロフ) - 初めまして。完結までお疲れ様でした！ リア設定での会話運び、ネタの進み、言葉選びまでどれも好きで好きでたまりませんでした。素敵な小説に出会えて本当に嬉しかったです。丁寧な文章に一読惚れ？してしまいました。過去作品を拝見しこれからも楽しませて頂きます！ (2021年5月31日 23時) (レス) id: ffc410049a (このIDを非表示/違反報告)
TAMA(プロフ) - 完結ありがとうございました。お疲れ様です。いつもはtnさんに振り回される主人公だったのが、今作は逆も見れてそれも凄く良かったです。二人とも可愛くて…！！ (2021年5月31日 16時) (レス) id: a53139177d (このIDを非表示/違反報告)
碧翔 - 更新停止になった時に、「完結しないのかな」とか思っちゃいました。でも、ランキング見て「あれ、更新ある！？」とか思って帰ってきました。完結おめでとうございます！新作待ってますね。 (2021年5月30日 22時) (レス) id: 0e1788e627 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2021年2月16日 20時
