君の話（３２） ページ33
.
ただ俺の心配に反して彼女はあっけらかんと笑っていて、一応想像していたようなことは何もないらしい。
だからって、はいそうですかで済む話ではない。
「何言われたんすか」
怒られた、と言った割になぜか楽しげなその横顔に問う。俺だけ焦ってるこの状況も意味がわからず、それも含めて訝しげに眉を寄せた。
「なんだろ…『ショッピ君に近づかないで！』…って言われた」
謎の裏声で迫真の演技をかまされ、「ちなみに今のかなり似てたから」とドヤ顔。
そんなヒステリックな声やったっけ、と思い出そうにもそもそも興味無い女の声なんか覚えていないのだった。
「………怒らへんの？」
ふと、その顔に向かって尋ねる。
いつもの彼女だったら100%不機嫌になっているはずのこの状況で、彼女がニコニコとしてるのが不自然だった。別に3日口聞いてほしくなかったわけではないけれど、何も無いのは無いで心配になるのだ。
恐る恐る尋ねた俺に「うーん、」と少し目を伏せ、キュッと口角を上げる。
「彼氏いるのにショッピ君にも手出すとか最低ですね、って言われたんだけど」
は？と俺の目に怒りが宿ったことに気づいたのか、彼女は「多分、お祭り一緒に行ったの見られてたんじゃないかな」と少し考えてそう呟く。
「でも、……何も言えなかった、私」
ポツリと、目を伏せたままそう言った。
「ショッピ君のこと、縛ってるのは本当だし、」と。
「……別に、ええやないですか。俺それが嫌やなんて言うたことないやん」
「うん。私もそう思ったの」
だから最低だなって。
ヘラっといつもの笑みを浮かべる彼女。
それは作りものの貼り付けた笑みでもなく、勿論無理した大人みたいな笑顔でもなく、いつも俺だけに向ける子どものような笑顔だった。
「ショッピ君が私のこと好きなのは知ってるし、私のこと大事にしてくれてるのも知ってる」
「まぁ、そうでしょうね」
「だから私、それに甘えてるの」
最低だね、ともう1度呟き、徐にぎゅっと俺の手を握った彼女。
「………私がこうしても、ショッピ君が怒らないこと知ってるの」
「よう分かっとるやないですか」
いつも弱い所を見せる時にしか言わない「ぎゅーして」を言った彼女の髪を撫で、自販機の死角でその身体を抱きしめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 458人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くろいるか - shpくん、、、ｗｗｗｗｗめっちゃ振り回されとるやないですかｗｗｗｗ (2022年10月11日 12時) (
レス) @page44 id: ebfe8bc644 (このIDを非表示/違反報告)
杏 - は、え。わ、好きです…！夢主ちゃんのふわふわしてる感じの性格も好きだし、振り回されるshpくんも好きです…！ゆららさんの作品は全部タイプでしかありません…！神なんですか…？ (2022年5月8日 11時) (レス) id: d5d19811bb (このIDを非表示/違反報告)
のあちゃ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！いやぁ、ショッピくん頑張った！www天然な感じの夢主ちゃんに振り回されるショッピくんが可愛かったですw最初から最後まで楽しんで読ませていただけました！次作も楽しみにしてます！！ (2021年2月16日 23時) (レス) id: 81ad50d586 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - とても大好きです…！もしや夢主ちゃん全ては計算なのでは…？とも考えましたが、とても天然で嫌味のない感じが大好きです！振り回されるshpくんにもとてもキュンキュンします！ (2020年10月30日 22時) (レス) id: 1952a00ad3 (このIDを非表示/違反報告)
みゃび - 誤字りました！！大変だと思うので無理せず頑張ってください！！この時期ですのでお体にもお気をつけて！！応援してます！！！！ (2020年10月30日 14時) (レス) id: 37d62a8c82 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年9月24日 22時
