8話 ページ8
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「逃げ足早いよな、お前」
「はぁ?」
玄関をくぐったところで後ろからかかった声に思わず爆速で振り返った。
いやいやおかしくない?おかしいよね。
大人しくシャオちゃんに捕まっててくれよ…。
という私の願いも虚しく、何故か私の後を追って靴を履き替えこちらに歩み寄ってくるトントン。
「え…?なんで?なんで来る?」
「俺かて帰りたいもん。別にお前のこと追ってきたわけちゃうで」
「いやいや、逃げ足早いなって今言ったじゃん!」
追ってきてるでしょどう考えても!大概にしろ!
心中様々な文句が渦巻いているものの、全て吐き出せばキリがないので大人な私は『秘技:無視』を決め込み踵を返し駅へと足を進める。
だけども、学校から出て向かう先はお互い同じ駅なわけで。一定間隔の距離を保ち後ろを歩く気配が気になって仕方ない。
いや、気にしたら負け、気にしたら負け…。
「なぁ」
「なんで話しかけた?空気感じ取れ」
「知るか、そんなもん」
顔を顰められるだけ顰めた私の隣へつかつかと歩み寄るこの男に、要求はなんだと身構える。
それを知ってか知らずかしれっと横に並んだトントンは、ごく普通に私に話しかけてくる。
「マジで勉強できてんな、お前」
「なに?それ言うためだけに私とわざわざ帰宅を共にしようとしてるわけ?」
「いや、ちゃうけど。純粋にびっくりしただけやで」
絶妙に褒められてる感のある悪口だよなぁ、と頭を巡らせた結果無視を決め込む。
数学はてんでダメなシャオちゃんがあそこまでスラスラと手を動かしているのを見て驚いたらしい。それは有難いけど、私はただ公式の使い方を教えただけだから凄いのはシャオちゃんだよな、と1人考えた。
「そっちこそ、そんなに頭いいなら教えてあげればいいのに」
「いやー…俺人に教えるん苦手やねん」
「へぇ…意外」
クラスの平均点を上げるためなら先陣切って教えにいきそうだなと思っていたけれど、そうでも無いらしい。
それでもシャオちゃんの事を気にかけて来てたあたり、面倒見はいいんだろうなと何となくそう思った。
と言うより、友達含め誰にでも分け隔てなく優しいのは知っていた。
それがなぜかと言えば、コイツは誰の目から見てもあからさまに私にだけ優しくないからだ。
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k - ほんまに、天才やと思います。いっぱい小説書いてほしい…あなたの作品がとても好きです (2022年3月18日 0時) (レス) @page43 id: a78c62413a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - え?え?待って?コネちゃん夢主ちゃんのことが好きだったってこと?えっえっ好き。 (2020年12月12日 16時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ルキさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございます( ´ ` *)ぜひ続編でお待ちしております!コメントありがとうございました。 (2020年7月18日 12時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - すきーーーーーー!!最高!作者様ありがとうございます!続編も楽しまさせていただきます! (2020年7月18日 11時) (レス) id: a52e442f29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 妹。さん» 予想に反してknさんの人気が高く驚いています…(笑)最後の台詞はこだわっていたのでキュンキュンしていただけたのなら幸いです( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年7月18日 9時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年5月24日 21時