43話 ページ43
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「好きなやつ出来てんやろ」
「え…なんで、」
向かい合って座ったいつものファーストフード店。腰を落ち着けるや否やそう言ったコネちゃん。
「分かるわそら。何年お前と一緒におると思っとんねん」
顔見ればわかる、と言ったコネちゃんに内心複雑。
だってコネちゃん、私がまさか自分のことを好きだったなんて思ってもいないだろうから。
_______好きだった。過去形だ。
10年募らせた想いは、本当にぽっと出の嫌いだったヤツにあっという間にカッ攫われてしまった。
「で?相手はあれやろ、前一緒におった男」
「なっ、なんで分かるの!?」
「あはは!やっぱりな!そら分かるで」
お前が俺の前で男の話することとか無かったやん、と。
確かに私は『ムカつく風紀委員の男』の愚痴を何度もコネちゃんにぶちまけていた。もうその段階から感づかれていたというのか。
男の話をしなかったのはコネちゃんのことが好きだったから。パーソナルスペースに異性がいる事を察されると、コネちゃんが離れていってしまうと思っていたから。
でも、『嫌いだった男』の話は無意識にしてしまっていたのだ。だって、嫌いだったんだから。
「…………ねぇコネちゃん」
「なに?」
10年来燻らせていた気持ちは、いとも簡単に溶けてしまった。
どこまでもムカつく、あの男によって。
「私…コネちゃんのこと好きだったよ」
「せやろな、知ってんで」
え、と顔を上げると、「俺が気づいてないとでも思ったんか?」とニヤニヤ笑う、幼馴染。
「いつ言うてくんねやろなーって待っとったら振られてもたわ」
「…………、うそ」
「嘘なんかつくか。俺より好きになってもたん?アイツのこと」
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「………………うん、」
絞り出した声にコネちゃんが笑う気配。
そして一言、「応援してんで」と。
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「じゃ、付き合ったら俺に報告しろよ」
「あーはいはい」
数時間後、並んで後にしたファーストフード店の前でコネちゃんがそう言う。
それから一緒に駅に向かうのかと思いきや、「俺今日寄るとこあんねん」と私と逆方向に足を向けた。
「じゃーな、また飯奢れよ」
「はぁ?やだよ」
いつも通り軽口を叩き、手を振って背を向けたとき、
「A」
「…ん、なに?」
振り返った先、「たまには俺にも付き合えよ」と笑ったコネちゃんの顔は、どこか少し寂しそうだった。
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k - ほんまに、天才やと思います。いっぱい小説書いてほしい…あなたの作品がとても好きです (2022年3月18日 0時) (レス) @page43 id: a78c62413a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - え?え?待って?コネちゃん夢主ちゃんのことが好きだったってこと?えっえっ好き。 (2020年12月12日 16時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ルキさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございます( ´ ` *)ぜひ続編でお待ちしております!コメントありがとうございました。 (2020年7月18日 12時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - すきーーーーーー!!最高!作者様ありがとうございます!続編も楽しまさせていただきます! (2020年7月18日 11時) (レス) id: a52e442f29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 妹。さん» 予想に反してknさんの人気が高く驚いています…(笑)最後の台詞はこだわっていたのでキュンキュンしていただけたのなら幸いです( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年7月18日 9時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年5月24日 21時