36話 ページ36
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その後もなかなか日向に出る気になれず、何をするでもなくベンチにへばりついていた。
『どこ行く?』『どこでも』『うーん…』と10回ほど同じ会話を繰り返し、結局両者動かず日陰を堪能している。
元々仲良く会話を楽しむ間柄でもない私たちの間に落ちるのは、圧倒的に沈黙の方が多かった。
別に気まずいこともないけれど、今の私は会話がないことによってぽっかり空いた思考に余計なことがなだれ込んで来てしまって困るので、できることなら会話していた方がマシだった。
まぁ、隣に座るコイツは、私がそう思っていることなど夢のまた夢にも見ていないのだろうけど。
チラリと隣を見る。
グッと伸びをしたトントンは手持ち無沙汰に弄っていたアイスのハズレ棒をゴミ箱へ放り投げ、不意に私の方へ顔を向けた。
まさかこっちを見るとは思っていなかった私はその視線を真っ向から受けてしまい、若干キョドる。
「あー…、あのさ」
「な、なに」
じっと私を見据える目は真剣そのもので、急になんだと身構える。
その真剣な空気を纏ったトントンは、しばらく言い淀み、そしてまた口を開いた。
「俺さ、アイツに好きや言われてんけど」
「アイツって…あぁ、モモちゃんね、」
まぁそうでしょうね、とそこに関しては驚きも戸惑いもしないけれど、目の前のこの男もまた、照れているでも嬉しそうでもどっちでもなかった。
喜びの報告でなかったことにどこか安堵している自分を感じたけれど、全力で気づかないふりをした。
「で、1個お前に聞きたいねんけどさ」
「え?…な、なに」
強い口調だった。それと同様の強い視線は私を捉え、目を逸らすという選択肢を私の頭から消し去った。
何を言われるのかと顔色を伺う私に、トントンは口を開く。
「俺、アイツと付き合った方がええと思う?」
「………………、は?」
あ……恋愛相談ですか…?と張り詰めた緊張が一気に熔け、脱力。
ていうか。
「なんでそんなこと私に聞くの?自分で考えなよ…」
昨日のシャオちゃんの言う通り、本当に満更でも無かったんかい、とジト目でその顔を横目に見て、小さくため息をついた。
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k - ほんまに、天才やと思います。いっぱい小説書いてほしい…あなたの作品がとても好きです (2022年3月18日 0時) (レス) @page43 id: a78c62413a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - え?え?待って?コネちゃん夢主ちゃんのことが好きだったってこと?えっえっ好き。 (2020年12月12日 16時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ルキさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございます( ´ ` *)ぜひ続編でお待ちしております!コメントありがとうございました。 (2020年7月18日 12時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - すきーーーーーー!!最高!作者様ありがとうございます!続編も楽しまさせていただきます! (2020年7月18日 11時) (レス) id: a52e442f29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 妹。さん» 予想に反してknさんの人気が高く驚いています…(笑)最後の台詞はこだわっていたのでキュンキュンしていただけたのなら幸いです( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年7月18日 9時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年5月24日 21時