33話 ページ33
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駅に着いたバスを降りてからも、曖昧な返事しか返せない私に2人は再度誘ってくれた。
「どう?俺らと行かない?」
「えー…うーん、」
躊躇っていた理由は主に2つ。
ひとつは、この2人と行動を共にするくらいなら、1人でいた方がいくらかマシだから。誘ってくれるのは有難いけれど、顔も名前も未だに一致しないような人たちと丸一日一緒にいるのは私にとって苦痛だった。
もうひとつは、私の期待。
すっかり乙女思考の私は、まだどこかでトントンが私と一緒にいることを選んでくれるんじゃないかな、と思ってしまっているから。
片時も離れないあの2人の姿を見ていても尚、そんなことを思ってしまうのだ。
______昨日、私に向けられたあの真っ直ぐな目を思い出すと、どうしてもその誘いにYesと言えなかった。
故に、押し黙る私。
そんな私に、言葉が投げかけられる。
「いや…実は俺さ、Aちゃんと話してみたくて」
「そうそう、俺も」
えぇ…嘘くさ…なんて思ってしまう私の可愛げの無さは今日も絶好調だった。
苦笑いでやり過ごそうとしたところで、遠くの方から公共の場で出すには些か大きめの女の子の声が響いた。
「なんで!?」
「いやだから…何回も言うてるやん、」
呆気にとられてそちらに目を向ける私。
なにやらご立腹な様子のモモちゃんと、それに呆れ顔で困り果てているトントンが見える。
ぼーっと見ていた私の視線に気がついたのか、突如こちらに足を向けるトントンに思わず1歩後ずさり。え?巻き込まないでくださいやめて。
「さっさと行くで」
「は!?いやいや、何言ってるの、」
頼むから空気を読め?私は自分の命が惜しいんだ!とその後を着いてきた鬼のような形相のモモちゃんと、私への敵意に全く気がついていないトントンの顔を交互に見る。
……でも、モモちゃんを振り切ってまで私の方へ来てくれたことに内心喜んでいる自分もいて、私は私で本当に空気を読んでほしい。
ギャラリーもざわざわと私たちを見始めたとき、思いっきり『イラついてます』と顔に書いてあるトントンは再度モモちゃんに向き直る。
______そしてピシャリと言い放った。
「あんな、俺はAと回りたいねん。お前やなくて」
ギャラリー含め、その場にいた全員の視線が私へ集まったとき、等の私は「こんな時ばっかり名前で呼ぶな」なんて、全く別のことに頭を奪われていた。
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k - ほんまに、天才やと思います。いっぱい小説書いてほしい…あなたの作品がとても好きです (2022年3月18日 0時) (レス) @page43 id: a78c62413a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - え?え?待って?コネちゃん夢主ちゃんのことが好きだったってこと?えっえっ好き。 (2020年12月12日 16時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ルキさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございます( ´ ` *)ぜひ続編でお待ちしております!コメントありがとうございました。 (2020年7月18日 12時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - すきーーーーーー!!最高!作者様ありがとうございます!続編も楽しまさせていただきます! (2020年7月18日 11時) (レス) id: a52e442f29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 妹。さん» 予想に反してknさんの人気が高く驚いています…(笑)最後の台詞はこだわっていたのでキュンキュンしていただけたのなら幸いです( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年7月18日 9時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年5月24日 21時