20話 ページ20
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コネちゃんの高校もテスト期間だと言うのに、肩から下がる部活用のスポーツバッグ。それを揺らしながらいつものように私の方へ足を進める彼は、私の隣にトントンが立っていることに気がつき驚いたように目を瞬かせた。
「お前……彼氏おったんけ」
「もう…もう!なんで今会うかなぁ!?」
「なんやねん、水臭いやん!言えよ!」
ばしばしと私の肩を叩くコネちゃん。
自分のタイミングの悪さを呪うことに夢中で、最悪の勘違いを否定することを忘れていた。
慌てて口を開こうとすれば、先に言葉を発したのは私とコネちゃんのやり取りを交互に見ていたトントンだった。
「いや…全然ちゃいます、辞めてください」
ブンブンと手を振って否定する姿にそれはそれで腹が立つ、と思いつつも私も誤解されたままでは困るので便乗して大きく頷いた。
例えばシャオちゃんに誤解されたとしても1億歩譲って我慢できるとして、その相手がコネちゃんだと訳が違った。
「ねぇもう…ほんと忘れて、今見てること、全部」
「何でそんな必死なん?…あ、もしかして」
もしかして、と声を潜めたコネちゃんにビクリと肩を震わせたものの、私の心配を他所に耳元で囁かれたのは全く別の指摘だった。
「お前の嫌いな風紀委員サン、とやらか?」
「………そうだけど、ほんとに何も無いから忘れて、お願い」
私も同じように小声で訴え、その過剰な必死さが伝わったのか、「お前も複雑なことしてんねんな」とイマイチピンと来ない同情をされ、そのまま顔を上げたコネちゃんは、隣で呆気にとられているトントンに向き直った。
「いやぁほんますんません!コイツがいつも世話になっとります!」
「もぉぉ!ほんと黙って!お願い!」
伝わるだろうが、このコネちゃんも例の如く、チーム『私の不幸が面白くて仕方ない』のメンバーだった。
騒ぐだけ騒いで満足したのか、「せや、テストの番数今回も俺が勝つから飯奢れよ」と極めて一方的な約束を取り付けられ、ほんなら、と片手を上げてコネちゃんは去っていった。台風か何かか?
私同様、隣のトントンも、突然台風の目に引き込まれて驚いたのか、コネちゃんの去っていった後ろ姿をしばらく呆然と眺めていた。
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k - ほんまに、天才やと思います。いっぱい小説書いてほしい…あなたの作品がとても好きです (2022年3月18日 0時) (レス) @page43 id: a78c62413a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - え?え?待って?コネちゃん夢主ちゃんのことが好きだったってこと?えっえっ好き。 (2020年12月12日 16時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ルキさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございます( ´ ` *)ぜひ続編でお待ちしております!コメントありがとうございました。 (2020年7月18日 12時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - すきーーーーーー!!最高!作者様ありがとうございます!続編も楽しまさせていただきます! (2020年7月18日 11時) (レス) id: a52e442f29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 妹。さん» 予想に反してknさんの人気が高く驚いています…(笑)最後の台詞はこだわっていたのでキュンキュンしていただけたのなら幸いです( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年7月18日 9時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年5月24日 21時