16話 ページ16
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窓際の隅という神席がちょうど空いていて、トントンと二人そこへ腰を下ろす。
…なんか、トントンと2人で学校の外にいるの、変な感じ。
教室で二人きりになるのとはまた訳が違う空気感に、柄にもなく私は妙に落ち着かなかった。
「何食う?てかほんまにガッツリ食うつもりなん?」
「いや流石に……お昼だし」
じゃあ適当でええか、と呼んだ店員に選抜した食べ物達をスラスラと伝えるその横顔を呆気にとられつつ眺める。
「……な、なんやねん。足りひんかった?」
「え?いや…違うけど、」
スマートだなぁ、とか、気が利くなぁ、とか。
あれ?この人童貞だったよね?ひょっとしてファッション童貞?まさかね。
訝しげに私を見るその顔からフイと目を逸らし、ぐるぐると考えこむ。
…調子が狂う!いつもと違う面を見せられて調子が狂う!映画版ジャイアンみたいな現象だこれ!
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程なくして運ばれてきたいつもの塩辛いポテトを口にくわえ、頬杖を付くその顔をじとりと見上げる。
「だから…なんやねん。これ飲みたいんか?」
「………飲みたいけど違う」
白い乳酸飲料は、私の好きな味。例えばコネちゃんがそれを飲んでいれば間違いなくそのまま飲んでいただろうけれど、思い出すんだ私。相手は私の嫌いなトントンだ。
______……あれ?嫌い?嫌い、だったんだけど。
「………飲む?ええよ別に」
「っ、…もぉぉぉ〜…なんでそんなこと言うの!?」
差し出されたそれ、半ばヤケクソでそのままズーッと1口吸い上げて俯く。
「飲みすぎやろ」なんて言いながら、一瞬前に私がくわえていたストローでそれを飲むトントン。
「あ、…じゃあ俺もくれ」
「え?いいけ、…ど、」
1回してしまった関節キス、2回も1回も変わんないな、と顔を上げた私。
ストローを差し出そうとしたその瞬間、口に入れた2本目のポテトを摘んでちぎられる。
残ったそれを咀嚼することも忘れ、なんの躊躇いもなく口に入れられた残り半分を呆然と見つめる私。
「あれ?こんなしょっぱかったっけ?」
「………え?待って」
何普通に会話しようとしてるの?今この一瞬とんでもないことが起きてるよね?ねぇ、待ってよ、
私、なんでこんなに顔が赤いの。
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k - ほんまに、天才やと思います。いっぱい小説書いてほしい…あなたの作品がとても好きです (2022年3月18日 0時) (レス) @page43 id: a78c62413a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - え?え?待って?コネちゃん夢主ちゃんのことが好きだったってこと?えっえっ好き。 (2020年12月12日 16時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ルキさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございます( ´ ` *)ぜひ続編でお待ちしております!コメントありがとうございました。 (2020年7月18日 12時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - すきーーーーーー!!最高!作者様ありがとうございます!続編も楽しまさせていただきます! (2020年7月18日 11時) (レス) id: a52e442f29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 妹。さん» 予想に反してknさんの人気が高く驚いています…(笑)最後の台詞はこだわっていたのでキュンキュンしていただけたのなら幸いです( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年7月18日 9時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年5月24日 21時