15話 ページ15
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そんなことを知ってか知らずか、気にも留めていない様子のコイツは私の腕を掴んだまま歩き出した。誘拐か?通報しても許される?
「ねぇ待ってよ…どこ行く気?」
「どこって、そりゃ修学旅行の予定がたてられそうな場所やろ」
「なんで、学校でいいじゃん」
「いやー、今逃がしたらお前が素直に捕まってくれるとも思えへんし」
お見通しだった。図星を付かれて口ごもる。
ずんずんと腕を引っ張ったまま歩くトントンにされるがままに着いていく。足のリーチの差だけれど、そのペースに合わせると小走りになる私は我慢出来ず、グイッとその手を引いた。
「もう!もっと気使って歩いてくれない!?」
「ん?…あぁすまん。短足の気持ち考えてなかったわ」
「はぁぁぁ?女と歩いた事ないだけでしょ?」
せめてもの抵抗、反抗。
お得意のネタで返せば、珍しくムッとした顔になったトントンは、 歩幅を緩めて隣に並んだ。
「はぁ……、…これで満足ですか?男慣れしてるAさん」
「……………、は」
ポカンと見つめる顔、視線がそっぽを向くその頬は朱色で、覗く耳までピンク色。
いやそれはどうでも良くて。どうでも良くないんだけど一旦良くて。
「名前……知ってたの?」
「いや、なんで知らんねん。…普通に知っとるわ」
「だって今まで、…」
名前で呼んだこととか、なかったじゃん。
みなまで言わなかったのは、それを自覚したくなかったから。
自覚したくなかったのは、ぶわっと熱を持った頬が、トントンのそれと同じ色になってる事も自覚してしまうから。
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着いた先は学生の溜まり場、お馴染みのファーストフード店。
テスト期間である今、チラホラと同じ制服と見知った顔が見え、居心地が悪いことこの上なかった。
「………選択ミスじゃないの、ここ」
「…おん、俺も今そう思った」
どうする?という目で私を見るトントンの腕を、今度は逆に私が引っ張る。
「あーー、もう気にしたら負け!私お腹空いてるの」
少し前の私なら、脱兎の速度で店からUターンしていただろうけど。というかそもそもここまで並んで歩くことすら夢のまた夢だったけど。
「ふは、流石、食い意地が物言うてるだけあるな」
最近たまに覗くコイツの無邪気な顔に、私はどうしても弱いらしい。
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k - ほんまに、天才やと思います。いっぱい小説書いてほしい…あなたの作品がとても好きです (2022年3月18日 0時) (レス) @page43 id: a78c62413a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - え?え?待って?コネちゃん夢主ちゃんのことが好きだったってこと?えっえっ好き。 (2020年12月12日 16時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - ルキさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございます( ´ ` *)ぜひ続編でお待ちしております!コメントありがとうございました。 (2020年7月18日 12時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
ルキ - すきーーーーーー!!最高!作者様ありがとうございます!続編も楽しまさせていただきます! (2020年7月18日 11時) (レス) id: a52e442f29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - 妹。さん» 予想に反してknさんの人気が高く驚いています…(笑)最後の台詞はこだわっていたのでキュンキュンしていただけたのなら幸いです( ´ ` *)コメントありがとうございました! (2020年7月18日 9時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年5月24日 21時