【d!】ビターチョコレート【tn】

14話 ページ14

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そろり、そろりとカバンを手に縮こまり、周囲を伺うようにして教室を抜け出す。


地獄の宣告をされてから早数日。
テスト真っ只中の今週は午前放課で、今日の最終科目である現国のテストが終わり、ガヤガヤとこのあとの遊びの予定などをたてながら教室を出るクラスメイトに混ざりつつ、私は冒頭のようにして廊下を歩いていた。


何が楽しくてこんなSHINOBI的なことをしているかと言えば、理由はただひとつ。


トントンに会いたくない。それに尽きる。


何がなんでも風紀委員と行動を共にしなければならないことは、もう分かった。納得はしていないけれど理解はした。

だけど、あの男と楽しい修学旅行を共にするくらいなら、1人で行動した方が数兆倍マシ。どうせ仲のいい友達と回れないのなら1人で美味しいもの食べるツアーでもしよう…と考えていたのだ。



故に、ヤツとの接触を避けなければいけない。会ったら最後、囚人か？とでも言うような分刻みスケジュールを押し付けられかねない。それが何を意味するか、イコール死だ。




今日もそそくさと周りに紛れ込み、下駄箱まで辿り着く。何事もなく靴を履き替え、校門を目指し歩いていた。


認めよう、若干気は抜いていた。
ここまで来れば、と思っていた節はあった。



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「________やっと捕まえた」



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「………………ご、ご慈悲を」
「あかん。逃がさへんで」



校門にもたれ、携帯を見ていたヤツと目が合った瞬間、ガッチリと腕を掴まれた。



そして、強い。何が強いって手に込める力が女の腕を掴む力じゃない。大根か何かと勘違いしてないか？



「逃げ足早いとは思っとったけど、隠れんぼも得意やってんな」
「そのまま見逃していただいても良かったんじゃないっすかね…」
「往生際悪いな、諦めろ」



なんか、イキイキしてない？あぁそうか、私が嫌がってるからか。その性格をママの腹の中から見直せ！バーカ！童貞！


心の中の私はどんちゃん騒ぎをしているものの、実際の私は「嫌だ…嫌だ…」と嫌だbotに転落人生。嗚呼、神は死んだ。


「……っていうか、離してよ」
「は？逃げるやろ」
「痛いんだよ！力加減考えろ童貞！」


悲痛な叫びにスっと緩む手。前述の通り、緩んだだけで離されてはいないわけだが。

と言うより、こんな人だらけの校門の前、「離して」だの「童貞」だのと叫ぶ私たち(主に私)をすれ違う生徒がクスクス笑いつつ通り過ぎているのに今更気が付き、頭を抱えた。

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