35話 ページ35
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『部屋何階でしたっけ？』とこの間家まで送ってもらってからしばらくの間で曖昧になっていたのか、そう尋ねるショッピくん｡隣にいるらしい鬱くんはショッピくんを案内する余裕もないくらいにベロベロなっているのかな、とこの時間からの介抱に若干の不安を覚える。
そして程なくしてインターホンが鳴り、扉の奥から『ほら兄さん、Aさんとこ着きましたよ』という呆れ声と『名前呼ぶな言うとるやろ』という酔っ払いの声が聞こえてくる。
明らかにギスギスしているその空気に私を巻き込まないでほしいなぁ、と思いつつ、やかましい酔っ払いをいつまでも玄関前に置いておくわけにもいかないと意を決して玄関の扉を開いた。
「あ、気ぃつけてください」
「っ、わ！…ちょっと、！」
扉という仕切りがなくなった途端にまず目が合ったのはショッピくんで、そのコンマ1秒後にそれを遮ったのは藍色のスーツ。
倒れ込むようにして私を抱きすくめた鬱くん。咄嗟に足をふんばってそれを支えた｡
「すみません、Aさんの家じゃなきゃ帰らんとか言い出すから」
「ううん、いいよ……こっちこそごめんね、ここまで連れてこさせて」
後輩に女の家まで連れてこさせた当本人は、まだショッピくんが見ているにも関わらず私を抱きしめたまま髪に顔を埋めていた。
まるで気にしていないその様子は、寧ろ意図的にそれを見せつけているような気さえして私は倍増しで居心地が悪い。
「じゃ、俺さっさと帰れって言われとる気ぃするんで帰りますね」
押し付けて申し訳ないです、と最後の最後まで気を使われ、ブンブンと首を振った。こんな良くできた後輩がいるのに、この男は。
また今度ご飯でも行きましょうね、と言い残して踵を返したショッピくんを鬱くんの身体の隙間から見送って玄関をバタン、と閉めた。
途端、ふわっと身体が持ち上がる感覚に「へ、」と間抜けな声が漏れ、私を横抱きにして部屋に上がった鬱くんは、そのまま私をソファの上に押し付けた。
「……え？あの、」
近い、と私の顔の両脇に腕をつく鬱くんに向かってそう言えば、「今更ちゃう？」と返される。確かに、それもそうだった。
でもそうではなく、何故今突拍子もなくこんな状況になっているのか、という疑問も含んだ抑止の言葉だったのだけど、鬱くんにはそこまでは伝わらなかったらしい。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
