26話 ページ26
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一時間弱後、最寄りの居酒屋に揃う私、ショッピくん、そしてコネシマくん。
「なんで俺を巻き込むねん……俺今日定時ではよ帰れた思ったんに」
「じゃあちょうどよかったじゃん」
枝豆をつまみつつブツブツと私に文句を吐き連ねているの背中を軽い調子で叩く。「触んな」と思春期男子のような反応をされたところを見ると相当不満だったようで。
そんな私とコネシマくんのいつものやり取りをじっと眺めていたショッピくんはぽつりと呟く。
「コネシマさん、Aさんの前では思いっきり素晒しとるんすね」
「はぁ?別にいつもこうじゃ、俺は」
「ええー?いつもそんなんちゃいますよ」
確かにショッピくんの指摘通り、他の女性社員にはもう少しだけ丁寧で優しい対応をしているな、といつものコネシマくんを思い浮かべる。
それに比べ、同期だからという理由も相まって私への対応はかなり乱雑で適当だった。
「もうちょっと優しくしてもらっても構わないんですけど」
「いや優しいやろ、十分。誰がお前の残業付き合ってやっとると思っとんねん」
「あ……確かに。ショッピくん、優しいところもちょっとはあるんだよ、この人」
ちょっとちゃうわ、と隣から飛ぶ鋭い指摘はスルーして、「なるほど」と納得するショッピくん。
グラスをクルクルと回し、少し考えるような素振りを見せた彼は不思議そうに言葉を紡いだ。
「言うてコネシマさん、Aさんと仲ええやないですか?」
「うーん、同期だからね」
「それやのにうちの鬱兄さん、俺にばっかり『Aに手ぇ出すな』ってしつこいんはなんなんやろ」
ショッピくんの言葉に目を瞬かせる私と、盛大に吹き出して肩を震わせているコネシマくん。
というより、『ショッピくんと仲良うしたあかんよ』という言葉はその本人にもむき出しにしていたということに私は驚きを隠せないわけで。
だってそれだと、このショッピくんはそれを分かってて今日私を誘ったということに他ならない。相当鬱くんはケンカを売られていると見て間違いない。
「お前今日アイツの飯はよかったんか?」
「え?うん…今日は飲んでくるって、」
ふーん、と呟くコネシマくんも含め、私たちの会話はさして珍しいこともないけれど、ショッピくんは私を訝しげに見ていた。
「Aさん、マジであの人家に住まわせとるんすか?」
いや住まわせてはいない!ととりあえず事実だけ否定してその訝しげな目から逃れる。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです(笑)tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます&ありがとうございますっ!!凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください!! (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます!生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…!次回作も楽しみにしています! (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年3月22日 1時