24話 ページ24
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週明けの月曜、いつも通り私がオフィスに入る頃には真面目なコネシマくんはもう着席してパソコンを操作していた。
よくもまぁ月曜の朝から時間外労働ができるなぁと関心しつつ、後ろから声をかける。
「おはよ、早いね」
「お前が遅いんちゃうんけ」
時間内だし、と7時55分を差す時計をチラ見して文句を垂れる。
私が隣に来たことで集中が途切れたのか、伸ばしていた背筋を背もたれに預けてぐっと伸びるコネシマくん。バッグを置きつつ私もパソコンを起動させていれば、「あのさぁ、」とかかる声。
珍しく、なんとなく言いずらそうな気配を滲ませたその声に顔をそちらに向ければ、その顔には案の定眉間にシワが寄っていた。
「なに?」
「いやー…俺あんま言いたないねんけどな、ほんまは」
そう言われれば余計に気になってしまうのが人の性で、私も例に違わず彼らしくない歯切れの悪い言葉の先に興味が湧いてしまう。言いたくない、と言われているにも関わらず。
あれこれ言葉の先を予想していれば、意を決した様な面持ちでコネシマくんは口を開いた。
「あのさ、ショッピくん覚えとるか?」
「あぁ、うん。この間の」
突如その口から飛び出したのは、先週の金曜日に初対面だった鬱くんの後輩のショッピくん。
あの日彼に意味深なことを言われた私はもちろんその彼を忘れてなどいないけれど、その後に鬱くんの口から発された『ショッピくんと仲良うしたあかんよ』という言葉のほうが頭に残りすぎていて正直忘れかけていた。
それで、そのショッピくんがどうかしたのかと言葉の先を促す私に、コネシマくんは「ちょっと頼まれてんけど、」と。
「アイツ、お前の連絡先教えてくれってしつこいねん。何とかできひん?」
「連絡先…私の?」
なんで私なんか、と思ったけれど、あの日話していた面子の中で初対面が私しかいなかったから必然的にそうなるものか、と無理やり納得させてみる。
けれど、コネシマくんの言う「何とかできひん?」というのは何とかして連絡先を教えてくれということで間違いない。
「別にいいけど……」
「あ、ほんまか?なんや、意外とあっさり許可すんねや」
連絡先を教えるくらい、鬱くんは気にしないだろう。
鬱くんがどの程度のラインまでを『仲良う』に設定しているのか分からないけれど、これくらいは大丈夫なはず、と私は自分の線引きで軽く了承したのだった。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです(笑)tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます&ありがとうございますっ!!凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください!! (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます!生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…!次回作も楽しみにしています! (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年3月22日 1時