19話 ページ19
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グリグリと無言で責められているような感覚に異を唱えたいのは山々だったけれども、例によって私は『なんやと思う？』の答えなどわからないのだからどうしようもない。
顔に出る感情はすぐ分かるのに、こういう時の鬱くんは何を考えているか分からないのだ。都合が悪い。
「……退いてよ、」
「嫌や」
「なんで？」
「なんでやと思う？」
もうそれいいよ、とため息を吐き出して身をよじる。肩にのしかかる重みから逃れるために。
そうすれば。
「あーかーん。ここにおって」
「っちょ、手…！」
途端後ろから腰に回った手に今度こそ俊敏に振り返る。と、私の肩口から顔を上げていた鬱くんとばっちり目が合う。
それも、いつも一緒に寝ている時より何倍も近い距離で。
つまり、私は一緒のベッドで寝る時以上に鬱くんに近づいたことはないのだ。
「ふは、なんで目ぇ逸らすん、」
ギギギ、と油の足りていないロボットのように顔を前に戻した私を見て鬱くんは笑う。腕は私の腰に回したままで。
なんで？どうして？と疑問符が飛び交う頭はひとつの可能性を見出していた。
「………鬱くん、酔ってるんでしょ」
「あーまぁ、酔っとんな」
やっぱり、と呟き、そうすれば一連のらしくない行動全てに説明がついた。
酔ってるから、たまたま近くにいた私で人恋しさを埋めようとしているだけだ。
私のボランティアもここまで来れば時給が発生するぞ、とこのタイミングで一層腕に力を込めた鬱くんに悪態をついた。
再び肩口に顔を擦り始めた鬱くんは、「困んねんなぁ、」とぽつりと呟く。
すると、モゾ、とお腹の上の腕が動き、ぐっと後ろに引かれる。
「………酔っとんのに、嫉妬心だけは一丁前にあんねん」
引き寄せられた身体は完全に鬱くんに体重を預ける形になり、頭上から響く鬱くんの言葉を頭の中で3回ほど反芻させた後に出た私の言葉と言ったら。
「それ、私に言ってるの？」
「は？今誰と喋っとんの、俺」
違う、そうじゃない。
その言葉の中身は私に適用されるものなのか、ということを聞きたかったのだけど。
伝わってないよね？とチラリと振り返り、視線を上げれば。
「……あかんよ？ショッピくんと仲良うしたら」
真っ直ぐ私に射抜く視線は、不安と心配を滲ませながら私の中に入り込む。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
