9話 ページ9
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コネシマくんの誘いから数日、日取りと場所がぼんやり決まりだし、徐々にその予定が輪郭を帯びてきた頃。
今日も当たり前のようにうちに居座る鬱くんは、ベランダから「そういやさ、」と私に声をかけた。
「窓締めてくれる？それ意味無いんですけど」
「ええやん、俺の匂い」
煙草の臭いでしょ、と小さく悪態をついたのが聞こえたのか聞こえていないのか、まだ長かった煙草を灰皿に押し付けて部屋に戻ってくる鬱くん。
締めかけの扉から入り込む風が煙草の香りと鬱くんの香りを運んできて、隣に座った彼がそれらをより一層際立たせた。
「でさ、今週の金曜なんやけど」
「……今週の金曜、」
身に覚えのある日にちを頭で反芻させつつ、鬱くんに先を促せば。
「シッマに合コン誘われてん。だから夜帰られへん」
嫌な予感が現実味を帯び始め、「貴方の帰宅する場所はここじゃないんですけど」という指摘も二の次だった。
「今週の金曜」「シッマに誘われた合コン」というのは、紛れもなく私も参加するそれのことに違いなかった。
あの野郎、わざと鬱くんを誘ったな！とここにいないムカつく同期の顔を思い浮かべてギリリと拳を握った。
「珍しいよなぁ？アイツなんか妙に楽しそうに俺んこと誘ってきてん」
いつもそんなことせぇへんのに、と不思議そうな表情を浮かべる鬱くんに、それはコネシマくんが仕組んだことだという事実は伏せ、私は白状する。
「それ、私も行くの。コネシマくんに声かけられて」
「は？なに、そうやったん？」
はよ言うてよ、とへらりと笑うその顔から曖昧に目を逸らす。
大誤算だった。鬱くんがその場にいるとなれば、迂闊に出会いを求めに積極的になるのも躊躇われた。
加えて私は学生時代以来、久々に鬱くんが女に積極的になっている様を見なければならないのか、とモヤっとした胸の内が隠しきれない。
特に私にこだわっているわけでもないという気持ちをさらけ出しているのを見るのは当然いい気分はしないもので。
俯く私を覗き込む鬱くんは、「俺おって嫌やってんやろ」と含み笑いでそう言い、大体合ってる、と短く返す。
胸に蟠るこの気持ちは総評すればそういうことだから、間違ったことは言っていない。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
