30話 ページ30
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近頃の私は触れられることすら抵抗なく受け入れていて、一体どこまでなら鬱くんの行動を許してしまうんだろう、と鬱くんに対する自分の許容範囲に不安を感じていた。
私が何をしてもあっさり受け入れることに気づいているのか、鬱くんも段々私に対するボディータッチのラインが度を越してきている気がしなくもない。
「Aは俺に手厳しいから」
「えぇ、そんな事思ってたの？」
嘘じゃん、と思わず突っ込みたくなるような言葉が紡がれ眉を寄せる。
私自身、手厳しいとは真逆の位置にいると思っていて、むしろ最大限に甘やかしていると自負していたのだけれど。
当本人には、それが伝わっていなかったらしい。
どんだけわがままなの、なんて大きい子どもを見る目で鬱くんをまじまじと見ていれば、「いや、なんというか、」ともごもごと口の中で言葉を転がしつつ、ちらりと私を見やる。
「Aって割となんでも許してくれるけど、俺にずっとここにおってもええよとは言うてくれへんやん」
「…まぁ、うん」
「俺は、甘えさせてくれるけど、そういう厳しい部分もちゃんと残しといてくれるAがちょうどいいんよ」
これ分かる？と得意げに口角を上げてみせる鬱くんを尻目にしばし考え込む。
つまり、他の人はみんな鬱くんをただ甘やかしているだけだと。
『ずっとここに居てもいいよ』という優しさで鬱くんを引き止めるその人たちと私は確かに少し違うような気がした。
要は、適度に甘やかされたいけれど縛り付けられるのは窮屈だ、という意味。
「……それ、すっごい勝手」
「ふふ。……まぁ、それも過去の話やねんけど」
過去？
いきなりされたネタばらしは今までの話の流れを全て無意味なものに変え、じゃあこの無駄な討論は一体なんだったのかと人生の数分を無駄にしたことに一人腹が立った｡
のほほんと言葉を紡いだ鬱くんは、再度念を押すように「今は縛られたくないとか思ってへんよ」とあっさりそう言う。
「はぁ……そう、」
鬱くんの気まぐれにまたしても振り回された、と洗い物でもしようと腰を浮かせれば、デジャブ感のある「ちょ待ってや、」という引き止めの言葉。
「あーせやったな、Aは鈍感やから1から10まで言うたらな分かれへんよな」
やけくそ気味の声色は私の腕を引き、そのままその腕の中にすっぽりと私を収める。
ぎゅう、と回された腕の力に比例して熱くなる頬には気付かないふりをした。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
