39話 ページ39
.
「おー、迎えか？トントン」
「よう分かっとるやんシッマ」
「え？なに？俺だけ分かれへんねんけど！2人ってまじで付き合っとんの？」
突然目の前に好きな人が現れた衝撃で固まる私を他所に3人はいつもの調子で会話を進める。
大先生の問いに「まだやで」なんて返したトントンくんは固まる私の手を引っ張り立ち上がらせた。
「じゃ、連れて帰るわ。さいなら」
グイッと引かれた腕につんのめりそうになりながらも着いていき、ごめんまた今度、と2人に手を合わせた。
.
外に出るやいなや押し込まれたそこは、換気扇やパイプ管などがひしめくお店の路地裏。換気扇から出る生暖かい空気が身体にまとわりつき、壁に押し付けられた肩が少しだけ痛い。
「怒ってるの…？」
「怒ってへんと思う？」
間髪入れずにそう言われ、ヒュッと心臓が冷たくなる。お店にいた時から不機嫌そうな顔をしていたトントンくんは、予想通り怒っていたらしい。
この状況を鑑みるに私が怒らせてしまったという見解で間違っていないだろうけど、トントンくんを怒らせてしまうようなことをした覚えもなかった。だって今日は、ついさっき初めてトントンくんに会ったのだから。
「ごめん、私…何かしちゃったかな」
私の頭では正解が分からなかったので、恐る恐るそう尋ねる。
何か気に触ることをしてしまったのなら謝りたい。トントンくんに嫌われる事だけは耐えられない。
そう思いながら顔を見上げると、難しい顔をしていたトントンくんはゆっくり口を開いた。
「今日、なんで来んかったん？」
「、え？」
「あいつらと会う予定やったん？」
「ち、違う違う！」
慌ててブンブンと首を横に振って否定して誤解を解く。
「たまたま今日バイトだったの」
「バイト？してなかったやん」
「終わった後に話してただけ！」
訝しげな目を向けるトントンくんに、ほんとだよ、と再度念を押してそう言った。
つまりトントンくんは、私がコネシマくんと大先生と一緒にいたことに怒っていたということ？
それって、ヤキモチ？
「………何ニヤけてんねん」
「ご、ごめん…なんか、気にしてくれてたんだなと思って」
「はぁ？…ほんまタチ悪いわ、」
許さへんで、とムッとした表情のトントンくんは、ゆるゆるの顔をした私の顎を掬ってグッと唇を重ねた。
押し当てられただけの唇は、徐々に深さを増していく。口内で舌を絡めとられて歯列をなぞられる感覚に、またゾクリと身体が震えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1029人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫 - 主さんの語彙力がありすぎてめっちゃ物語を楽しめました！ 好みすぎる物語でキュンキュンしながら読み進めて1時間足らずで読み終えました！ 素敵な作品をありがとうございます！ (2022年3月31日 0時) (
レス) @page43 id: 2d8f825918 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 夢主ちゃんが純粋すぎてかわよ、、、zmニキのメッセージ直球wwwむっちゃ面白かったです！ (2020年5月26日 5時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - jiruさん» いつもありがとうございます( ´ ` *)そう言っていただけるとすごく励みになります、嬉しいです（ ; ; ）最後までお付き合いありがとうございました！新作も遊びに来ていただけたら嬉しいです( ´ ` *) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
jiru(プロフ) - 完結おめでとうございます。今回の作品も楽しませてもらいました！素敵な作品をありがとうございます。ゆららさんの作品はほんとに大好きなのでこれからも、楽しんで読ませてもらいます！！お体に気を付けてお過ごし下さい。 (2020年3月22日 22時) (レス) id: fc77c998f4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - Near(ニア)さん» 完結までお付き合いいただきありがとうございました。次回作も心に留まるようなものを作れるよう精一杯頑張りますので、ぜひ遊びに来てください( ´ ` *)コメントありがとうございました！ (2020年3月22日 19時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月1日 0時
