31話 ページ31
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他愛もない話をしながら楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろ帰るかという雰囲気になる。
顔に出る寂しい気持ちを隠しきれていない私を見て、スっと立ち上がって隣に来たトントンくんは私の頭を優しく撫でた。
「Aちゃんてほんとよく顔に出るよな」
「しょ、正直に生きてるの！」
「ふ、ええやん分かりやすくて。俺的にはかなり有難い」
そう言って私の肩を引き寄せグッと胸に抱いたトントンくんは、「会計してくるから外で待っとって」と言い残して暖簾の外へ出ていった。
……あ、お金！としばらく呆然と背中を見送ってから大事なことに気が付き、後でちゃんと渡そうと今は言われた通り大人しく外で待っていることにした。
時刻は十時を回ったところだった。
そんなに話してたっけ？と時間の経過に疑問を抱きつつ、お店の引き戸を開けて外へ出た。
ゾムくんが積極的に飲み屋さんに誘ってくれたおかげで、アルコールで火照った頬が外の空気で冷やされるこの感覚がいつの間にか少しお気に入りになっていた。
今日も例によって同じようにひんやりとした空気が頬を撫で、いつものように深呼吸をしようと息を吸うと、何処からか漂ってきた煙草の香りに慌ててむせこんだ。
その時、突然「ねぇねぇ」と声をかけられ、弾かれたように声のした方向へ顔を向けると。
「お姉さん、俺らと2軒目どう？」
「へ？に、2軒目？」
思わず復唱してしまったけれど、片手に煙草を挟むその人は、私の記憶の限り知り合いではない。
「えと……人違いじゃ、」
「一期一会って言うじゃん？初めましての付き合いも大事ってやつ」
確かに大事なことだな、と納得しかけたけど慌てて首を横に振る。私には、一期一会より大事なトントンくんが待っているのだ。
お断りしないと、と口を開きかけた時、それに被せて目の前のお兄さんが言う。
「お姉さん今日彼氏と来てんの？」
「え？いや、彼氏じゃ…」
「ふぅん。じゃあ丁度いいじゃん！ねぇ、おいでよ」
つい条件反射で真面目に答えてしまい、「すぐそこだから！」なんて声と共に強く腕を引かれて少し躓いてしまう。
あれ、これ、危ないんじゃ、と私が思った時にはもう遅く、腕を掴んでいた手が肩に回る______寸前。
「っひゃ！」
「_____何してんねん、行くで」
顔を上げれば、凄い形相で眉間に皺を寄せたトントンくん。
知らないお兄さんの倍の力で引き寄せられ、鼻をついていた煙草の香りがあっという間にトントンくんの香りでいっぱいになった。
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猫 - 主さんの語彙力がありすぎてめっちゃ物語を楽しめました！ 好みすぎる物語でキュンキュンしながら読み進めて1時間足らずで読み終えました！ 素敵な作品をありがとうございます！ (2022年3月31日 0時) (
レス) @page43 id: 2d8f825918 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 夢主ちゃんが純粋すぎてかわよ、、、zmニキのメッセージ直球wwwむっちゃ面白かったです！ (2020年5月26日 5時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - jiruさん» いつもありがとうございます( ´ ` *)そう言っていただけるとすごく励みになります、嬉しいです（ ; ; ）最後までお付き合いありがとうございました！新作も遊びに来ていただけたら嬉しいです( ´ ` *) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
jiru(プロフ) - 完結おめでとうございます。今回の作品も楽しませてもらいました！素敵な作品をありがとうございます。ゆららさんの作品はほんとに大好きなのでこれからも、楽しんで読ませてもらいます！！お体に気を付けてお過ごし下さい。 (2020年3月22日 22時) (レス) id: fc77c998f4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - Near(ニア)さん» 完結までお付き合いいただきありがとうございました。次回作も心に留まるようなものを作れるよう精一杯頑張りますので、ぜひ遊びに来てください( ´ ` *)コメントありがとうございました！ (2020年3月22日 19時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月1日 0時
