28話 ページ28
.
授業後、いつもの図書館でキーボードを叩く私。
時刻は七時過ぎ。ソワソワと落ち着かずパソコン用眼鏡をしきりにかけ直していた。
今日は朝起きた瞬間から今から待ち受けるトントンくんとのご飯の予定に緊張しっぱなしで、朝イチでゾムくんがあんな風に話しかけてくれなかったら私は授業の途中で逃げ出していたかもしれない。
そのゾムくんは「お幸せに〜」とニヤニヤしながら私にエールを送って帰ってしまい、現在私は1人、この図書館でトントンくんを待っているのだ。
手持ち無沙汰に立ち上げたパソコンで課題を進めているつもりが全く進んでないことに悶々と頭を抱えた。私ってば、意識しすぎだ。
何度目か分からないため息をつき、諦めてパソコンを閉じてグリグリと頭を押し付ける。
思えば、初めてキスしたあの日以来顔を見ていないトントンくん。正確には昨日会ったのだけど、姿を見ていないからあれはノーカンだ。
つまり、トントンくんの事が好きだと自覚してから、まだ面と向かって話したことがないのだ。
どんな顔して会えばいいんだろう、と今日1日考えていたけどまるでいい案が思い浮かばなかった。
そしてうだうだ考え散らかし、とうとう今この瞬間まで辿り着いてしまったわけで。
先程『今から行く』と連絡が来ていたからもう程なくして目の前に現れるであろうトントンくん。
そろそろ眼鏡も外そうと顔を上げたのと、「遅なってすまん、」と待ち焦がれたトントンくんが目の前に現れたのは同時だった。
「あああぁぁ………また見られた……」
「Aちゃん？腹減ったからはよ行こうぜ」
何も気にしていない様子のトントンくんと対象に、ブツブツと念仏を唱えつつ荷物を持って立ち上がる私。
どうしてこう、タイミングが悪いのか。
小走りでトントンくんの元へ駆け寄り、そう言えば今のところ特に焦って変なことしてないな、自分、とここまでは順調に事が進んでいることにほっと安堵。まぁ最も、私は彼が登場してからずっと視線は床なのだけれど。
「あ、せや。前から言おうと思っとってんけど」
「ん？」
「似合ってんで、眼鏡」
「………え、」
思わず顔を上げてしまい、意地悪く微笑むトントンくんと視線が絡む。
顔に熱が集まるのを感じながら、そんな私を見てトントンくんはいつものように笑った気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1029人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫 - 主さんの語彙力がありすぎてめっちゃ物語を楽しめました！ 好みすぎる物語でキュンキュンしながら読み進めて1時間足らずで読み終えました！ 素敵な作品をありがとうございます！ (2022年3月31日 0時) (
レス) @page43 id: 2d8f825918 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 夢主ちゃんが純粋すぎてかわよ、、、zmニキのメッセージ直球wwwむっちゃ面白かったです！ (2020年5月26日 5時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - jiruさん» いつもありがとうございます( ´ ` *)そう言っていただけるとすごく励みになります、嬉しいです（ ; ; ）最後までお付き合いありがとうございました！新作も遊びに来ていただけたら嬉しいです( ´ ` *) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
jiru(プロフ) - 完結おめでとうございます。今回の作品も楽しませてもらいました！素敵な作品をありがとうございます。ゆららさんの作品はほんとに大好きなのでこれからも、楽しんで読ませてもらいます！！お体に気を付けてお過ごし下さい。 (2020年3月22日 22時) (レス) id: fc77c998f4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらら(プロフ) - Near(ニア)さん» 完結までお付き合いいただきありがとうございました。次回作も心に留まるようなものを作れるよう精一杯頑張りますので、ぜひ遊びに来てください( ´ ` *)コメントありがとうございました！ (2020年3月22日 19時) (レス) id: 5de7af82d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月1日 0時
