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17話 ページ18

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グッ、と手首を押さえつけられる感覚に弾かれたように思考がそちらへ戻る。

痛いくらいの力で私の手首を握るゾムくんが真上から私を覗き込んでいて、その眼力の鋭さに『あぁ、また怒ってる』なんて私はやけに他人事だった。

「他のこと考える余裕あんねや」
「、…そんなんじゃないけど」

面白いくらいお互い無言で事を進めていたのが懐かしくなるくらい、最近のゾムくんは最中私に話しかけてくる。
別にそれは嫌でもないけれど、話しかけられるその内容は決まっていつも私に対する文句だから、バツが悪く視線を逸らす。


熱を吐き出すためだけの事務的な行為は、最近になり少しずつ変化していた。
目を逸らせば「こっち見ろや」と顔を顰められ、必要最低限の吐息と嬌声しか漏らさない私に「我慢せんでや」と激しく身体を揺さぶられる。


どうしてなんだろう。私たちにはそんなこと、必要ない筈なのに。
だからこそ、今まで淡白だったのに。


ゾムくんの気まぐれか、はたまた考え方が変わったのか、それとも彼自身私のように寂しい日でもあるのか、私は日を追うごとにゾムくんの変化に心がついていかなくなってきていた。

プラスに見えるその変化は、閉じ込めていた私の気持ちをこじ開けようとしていた。『ゾムくんは私を好きにならない』そう分かっているはずなのに、そんなことをされ続ければその考えすらも淡く溶けてしまいそうだった。


それはいけないことだった。あの日、つい勢い任せで言ってしまった『私の事なんとも思ってないじゃん』という言葉は、お互い触れない暗黙のルールだった。

『お互いを好きにならない』のルールに加えて、私は『ゾムくんへの気持ちに目を逸らす』というルールを自身で勝手に作っていた。


「なぁ………A」
「……ん、…っ」


今日もまた、彼は私の名前を呼んだ。
下で啼く女なんて誰でもいいはずなのに、私の名前を呼ぶのだ。


決まってその先の言葉は無いけれど、名前を呼ぶ時の表情はいつも同じだった。

悲しげで、儚く消えてしまいそうな、そんな切ない顔だった。

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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…やばい…うわぁぁ…好き…(語彙力皆無) (2021年3月31日 14時) (レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
ことこ(ドS娘)(プロフ) - あーーーーーーーーーーdi先生ーーーーーーー(震え)って現在なってます。うううううう推しはzmさんなのにううううううこんなに私を惑わすなんて……罪ですねっ!!(オールで小説を読んでた馬鹿野郎より) (2020年8月15日 8時) (レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - えぇ、、、無理、、、好きです。もう最高でした!神作品ですね!というかtn落ち多いしzm落ちのこの作品もむっちゃよくてtnzmが最推しな我歓喜 (2020年5月26日 2時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あと1週間はこのお話のエモさを思い出しては悶えると思います。本当に素敵な作品をありがとうございました。次回作も応援しています!長々とコメント失礼しました。 (2020年3月6日 9時) (レス) id: e6da1803b4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 変わっていく気持ちが、さらにutさんと2人は違うということを強調されていて、報われないutさんに心が苦しいです。でも2人がハッピーエンドを迎えられて本当によかったです。zmさんはこのお話の主人公でしたが、utさんこそ間違いなくヒーローだったと思います。 (2020年3月6日 9時) (レス) id: e6da1803b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年2月11日 22時

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