プロローグ ページ1
理想年暦 1294年 一ノ月・十二日。
その日、魔界にて『竜魔戦争』が開戦した。
きっかけは、魔族が竜人族の帝王を暗殺した事。帝王が『竜魔協定』の宣言に赴く際、馬車に乗ろうとしていたところを魔族の暗殺者が帝王を射殺。竜人族はこの行為を『魔族の宣戦布告』と見なし、翌日の早朝に魔族との戦争を宣言した。
こうして、悪魔系の総称である“魔族”と竜から人の姿へと進化した“竜人族”の、長く苦しい戦争が始まった。この戦争は5年と11ヶ月に及び、魔界に留まらず様々な世界を巻き込んだ大戦争となった。
当時の私は、ごく普通の街で普通に生活をする一般家庭にいるような、特別なことのない少女だった。しかし、私と3つ下の弟は竜魔戦争の煽りを受けて徴兵された。竜人族は幼くとも育成をすれば、十分な戦力の見込める少数の種族だ。個体数の多い魔族に対抗するには、子供も戦場に投入するしかない状況にあったのである。
徴兵された者は三年間訓練を受ける。その訓練は当時の私には厳しすぎるものだった。私はまともな実績を残せず、演習でも仲間の足を引っ張る有様。遂に私は周りから『使えない』と言われるようになった。
けれども、私の弟は違った。初めこそ『私と同じく何も出来ないだろう』と思われていたが、あの子は周りの予想に反して成績優秀だった。前線に出せば敵なし。あの子の強さは誰もが認める『竜人の英雄』だった。しかしあの子はまだ心身共に幼く天真爛漫で、やんちゃをしては一緒に謝っていたものだ。
私はどんなに大変でも、あの子さえ居てくれれば毎日を生き抜いていられる。あの子が隣にいれば良い。それだけで良かった。
…だが、神は私の切なる願いを聞き入れてはくれなかった。
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時