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オトナ ページ32

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……レジ打ちは、慣れるまでが大変だと気が付いた。
骨董品のような変わったレジだから、一つ一つの作業が難しくて顔を歪める。

上からは 眠たそうだけれど、冷たいそらるさんの視線が降ってきていて 尚更だった。

……腰がまだ熱い。
思い出すと、緊張して手が滑らかに動かなかった。

「……ねぇ、何してんの」
「え……?」

私は 彼の明らかに不機嫌そうな声で、しばらくフリーズしてしまっていたことに気がついた。

「や、これは……」
「寝不足?」

……え。
絶対、怒られると思ったのに。

そらるさんは意外にも、私のことを心配しているようだった。

意識した途端胸が痛くなってくる。
だってこんなこと、予想したくてもできなかったから。

「……広瀬さん、もしかして心配してくれてるんですか?」
「え?……んな訳ないじゃん」

彼は相も変わらず眠たそうに、のんびりと“藤咲さんが見てたからだよ”と笑った。

それはあまりにも屈託のない微笑みで、残酷なことばかりしないでほしいと思った。



「ねぇA、拗ねてるの?」
「……いいえ」

拗ねてんじゃん、と笑って、後ろ髪に優しく触れる。

ぞわりと悪寒がした。

触れられたところだけ、赤く熱を帯びて じわじわと傷口が炎症をおこしてゆく。

一番はじめに触れられた足首も、頬も、今日触れられた腕と腰も。

「……触らないでください」

そらるさんに染められてゆく気がして、怖かった。

「どうして?子供でもあるまいし」
「……!」

心臓に 土足で踏み込まれた感じがした。
ドキンドキンと鼓動の音がうるさくて、何を言われても ぼんやりとしか聞こえない。

「……と、とにかく 嫌なんです。広瀬さんも大人なら 分かってください」

……なぜだろう。彼は一瞬、大人というワードに過敏に反応したように思えた。
分かったと、大人しく自分の立ち位置まで戻ると、次のお客さんが来るまでお互いに口を開くことはなかった。


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設定タグ:そらる , 伊東歌詞太郎 , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
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そのだ(プロフ) - http://uranai.nosv.org/u.php/hp/gmmnk/ (2017年9月10日 19時) (レス) id: 103f1e7372 (このIDを非表示/違反報告)
ぜんざい大好きマン(プロフ) - ところで、みんくさん今年高校にご入学されたんですね、おめでとうございます。でもそうすると、班クソ書き始めたのって中2の時ってことになりません? (2017年8月17日 22時) (レス) id: dc0cb92ab3 (このIDを非表示/違反報告)
ぜんざい大好きマン(プロフ) - みんくさん素直に信じてTwitterでおてぃんてぃんランド開園しちゃうとか言ってたのに、カワイソウ。みんくさんの気持ちを弄ぶなんてけしからん奴じゃ。 (2017年8月17日 22時) (レス) id: dc0cb92ab3 (このIDを非表示/違反報告)
天宮みんく(プロフ) - (サブ垢の方で返信したのは間違いです) (2017年8月14日 21時) (レス) id: c59fc0c6df (このIDを非表示/違反報告)
天宮サブ垢(プロフ) - ぜんざい大好きマンさん» なるほど!そうだったんですね笑。確かに二次創作書いてる時点でオチは分かってますし内容や書き方も未熟なのでそう言われても仕方が無いですね^^* (2017年8月14日 21時) (レス) id: f92d1429d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天宮みんく | 作者ホームページ:@Tengu_Mink  
作成日時:2017年8月4日 12時

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