兄妹なんて､聞いてない【中原中也】2

53話 ページ5

『はぁっ…はぁっ…はぁっ…』


やっとのことで駐車場にたどり着く

お兄ちゃんの車は……あっちだよね……ん？

バタン

爆弾を仕掛けたのか､車から太宰さんが出てきた

良かった…間に合った…！

少し休憩して､息を整える


『…太宰さん！！』

太「Aちゃん？どうしたの､こんな所で…」

『勝手ながら､太宰さんのお見送りに来ました！』

太「ふふっありがと」


太宰さんにはお世話になったことも沢山あるしね

お見送りくらいしなきゃ


太「Aちゃん､私と此方に来ないかい？」

『………え？』

太「私はね､人を救う側の人間になりたいのだよ｡良かったらAちゃんもどうだい？」


嬉しい…嬉しいんだけど…

……私に此処を抜ける勇気なんてものは､0に等しい

裏切り者とされ､殺されるかもしれない

それに､此方にはお兄ちゃんだっているのだ

そんな易々と離れることはできない


『お誘いありがとうございます､嬉しいです｡…でも､私は此処に残ります』

太「そう｡Aちゃんがそう言うなら仕方ないね」

『済みません…』


嗚呼…また涙が私の頬をつたっていく


太「Aちゃん､また会えるといいね」


太宰さんはくるりと向きを帰ると光の方へと行ってしまう


『太宰さん……ありがとう…ござい､ました…』


太宰さんを後ろから､思いきり抱き締めた


太「……！」


太宰さんは驚いていたようだったけど私の手を優しくふりほどいて此方を向く


太「ふふっ…Aちゃん…頑張って､ね」

『…はい！』


太宰さんは涙をこらえているようで…

最後には､私の頭を優しく撫でてくれた









＿＿＿そして､太宰さんは向こう側に……消えてしまった

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