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「どうせまだ食べるんだから拭かなくても良かったんじゃないの？」
「ええっ、でもなんか気になっちゃって……」
玲名とリュウジが話す中、ようやく解放されたAは再びフォークに手を伸ばし、残りのナポリタンを食べ進めた。ナポリタンを食している時のAは静かで、かなり真剣になっている。じっと見つめていると、「これは誰にも盗らせない」と言わんばかりに皿を腕で隠された。
「あーっ！ また口汚れてるよ！」
「だから言ったじゃん、どうせまだ食べるんだからって」
Aを歓迎し、共に楽しんでくれる存在に出会えて、きっと嬉しいのだろう。ナポリタンを頬張る口角はほのかに上がっていた。今まで壮絶な暮らしをしてきたAにとって、同年代の、それも同じような理由でやって来た子供たちと仲良くできることはこれ以上ない幸せだろう。またウェットティッシュを手に取るリュウジに対し、お構い無しにナポリタンを食べるのだった。
──そんな少女が、どうしてこうなったのだろう。人間とはたった二年の間で変わってしまうのか。
「バカ晴矢！ アタシのお菓子勝手に食べたでしょ！ ほんとありえないから！」
「ちげーし！ 大方、寝ぼけてる間に食ったんだろ、お前が」
「はぁ？ そんなわけない！ 寝言は寝て言いなさい」
冷蔵庫の前で論争を続けるのは、晴矢とかつては大人しく可愛らしい少女だったAだ。どういうわけか、二年間でここまで変貌してしまった。今では晴矢と毎日のように対立しては、リュウジに仲介してもらうことで何とか喧嘩を抑えている。
お菓子──曰くプリンらしい──たかがお菓子であそこまで熱くなれるとはある意味才能だとヒロトは感じる。まともに付き合う晴矢も晴矢だ。そんなAが、あの頃と同じ純粋な少女に戻る日がある。それは、毎月一回、園の門が開く時。
「あれ、父さんだよね。A、出迎えてあげて」
「お父さん！？ やった、今すぐ行くわ！」
晴矢を押し退けて、一目散に玄関に飛び出す。父の名前を聞いただけで一気に大人しくなるのだから、彼の存在は偉大だ。窓を見ればもう門へ辿り着いたようで、吉良の隣を楽しそうに歩いている。心做しか足取りが軽い。
彼女の笑顔は、絶やしていけないものだと密かにヒロトは思うのだった。嬉しそうに笑いながら、玄関へ足を進めるAは、これが夢ならば一生覚めないでと願うばかりだ。
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ありさ(プロフ) - 掛け持ち魔ﾁｮｺﾐﾙｸ ﾁｮｺﾐﾝﾄ味 2号さん» コメントありがとうございます！励みになります。最後まできっちり終わらせたいと思っておりますので、コツコツ更新していきますので…！ (5月14日 13時) (
レス) id: 8695fc1b44 (このIDを非表示/違反報告)
掛け持ち魔ﾁｮｺﾐﾙｸ ﾁｮｺﾐﾝﾄ味 2号(プロフ) - すいません…さっきのコメント見てたら忘れてください…変なこと言いました…溢れ出る文才を感じます！それに更新も凄く早くて尊敬です！ですが無理せず体調に気をつけてください！ (5月14日 12時) (レス) id: 69c0870a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ありさ | 作成日時：2023年5月6日 2時
