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裏「もしもし、Aさん?」

《お疲れ様です、裏道さん。遅い時間にごめんなさい。》

裏「いつもこの時間は起きてるから平気。…それよりも体調はどう?」

《お陰様ですっかり元気です。むしろ暇で何しようかと悩みますね。》

くすくすと電話口から聞こえる声はいつも通りのAで、裏道はほっと胸を撫で下ろした。

裏「それは良かった。…にしても、急にどうしたの?」

ほんの少し、間が開く。

裏「…Aさん?」

《…裏道さん、今度の土曜日一緒に出かけませんか?》

裏「…それは、」

以前自分がAとデートしたいと指定した日だった。

《あれ?前に誘ってくれたじゃないですか。》

裏「…出歩いたりして身体は大丈夫なの?」

《大丈夫ですよ!…それに、どうしても裏道さんに話したい事があるんです。》

その言葉にどきりとした。

裏(…もしかして、高見野さんから話を聞いてる?)

《…その日って空いてますか?》

裏「…っ、空いてるから平気。そしたら待ち合わせは———」




——

———


そして今日に至るのだ。

『………ちさん……裏道さん!』

裏「え、」

Aに呼ばれてハッとした。

『え、じゃ無いですよ!話聞いてました?』

裏「あ…悪い。ぼんやりしてた。」

お昼ご飯もそこそこに食べてAが忙しくて行けなかった場所を回りつつ、現在はカフェで一休みをしていた。

『もう…仕方ないですね。』

そう言ってにこりと笑う姿は会った当初とは違い、随分と柔らかく笑うようになった。
その姿が可愛いよりも、もっと違う感情になってきているのを自覚させられてしまう。

裏(……俺は、)

『……裏道さん。』

裏「っ、どうしたの?」

真剣な顔したAはひと口紅茶を飲むと、ティーカップをテーブルの上に置いた。

『先日、高見野から連絡がありました。』

裏「高見野、さん?」

電話の時と同じようにどきりと胸がなったが、悟られないよう知らない振りをする。

『以前話した私の上司です。…どうやらうちの部署からもう1人、ママンとトゥギャザーに派遣されるかもしれません。』

裏「そうなんだ…。Aさんの同期とか?」

裏道が聞いた時に、ピクリと一瞬身体を強張らせる。

『……いえ、1つ先輩の彩色(さいしょく)という人です。』

裏「そう。………ねぇ、Aさん。」

『はい?』

裏「その人が、前泣いた理由の人?」

『!』

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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時

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