帰り道2&兎の憂鬱の行方 ページ11
店から出てしばらくたっても裏道は無言のまま、Aの手を繋いだまま離さない。
裏道は背中を向けたままで表情を読み取れないが、どことなくピリピリしている雰囲気がある。
『う、裏道さん…?』
裏「……何。」
『その……怒ってます…よね?』
裏「………。」
問いかけに返答が返ってこない事に不安を隠せないA。
(とりあえず謝るのも失礼だし…どうしよう、裏道さんが何に怒っているのか分からないな…)
早足で歩いていた裏道がぴたりと止まる。裏道はそのまま話し始めた。
裏「…この前話した飯の事だけど。」
『飯…あ、ご飯行きましょうって言ってた話ですか?』
裏「そ。…あれ、やっぱ無し。」
『……え、………そう、ですか。』
「無し」ときっぱり言われた言葉が胸に刺さる。それだけ自分は楽しみにしていたんだと今になって理解した。
振り返った裏道は怒った顔ではなく、いつにも増して真剣な顔をしていた。
裏「1番近い休みの日、俺とデートして。」
『……へ、』
裏「言っとくけど、拒否権無いから。」
『あ、あの、えっ?でっ、デート…』
裏「分かった?」
そう言って目線はAに向けたまま、繋いでいた手の甲に軽く唇を落とす。
そこは先程猫田からキスされた場所だった。
『ーーーっ!!…わかり…ました。』
もう何が何だか分からず、顔も手も全てが熱く心恐ろしい速さで鼓動が鳴っている。裏道から目を逸らそうにも、裏道の自分を捉えて離さない瞳に後ずさりしてしまいそうになる。
裏「なら良いけど。」
ふっと笑みをこぼす裏道は満足そうにA
を見ると、ゆっくり手を離した。
裏「今週末とか、空いてる?」
『ちょっと確認しますね……あ、土日どちらも空いてます。』
スマホのカレンダーを見ると、珍しく土日は仕事の予定が入っていなかった。入っている方がおかしいのだが…
裏「なら土曜日、そうだな…お昼一緒に食べようか。」
『それ良いですね!なら11時頃に待ち合わせしますか?』
裏「いや、その時間くらいに迎えに行く。」
『そっ、それは悪いですよ!』
裏「Aさんの家駅方面だろ。近くなんだから気にしなくて良いよ。」
『…じゃあ、お願いします。』
裏「ん、土曜日楽しみにしてる。」
そう言って嬉しそうに目を細めて笑う裏道に見惚れてしまったのは言うまでもない。
Aは繋がれた手に少し力を込めたのだった。
ーーーーー翌日
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時