桃ジュース【桃】 (ページ6)

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「ええ？！もうこんな時間なの？！」

佐久間さんは自分の腕時計を見た瞬間に、勢いよく立ち上がってオーバーリアクション。

『ふふっ、楽しかったからあっという間でしたね笑』

かれこれ2時間以上話していた。

明るくて気遣い屋さんな彼との時間はただただ穏やかだった。

(大丈夫かな……)

本指名代と席代とドリンク代、初めて来た人にしてはかなりの額になっていることだろう。

『あの、佐久間さん_____』

今回はきちんとした接客を出来なかったから、という理由でなんとかしようと思っていた時だった。

「じゃ、これで！」

机の上にポスっと置かれた札束。

『えっ……？』

「すっごく楽しかったから、また来てもいいですか？」

『あっ、はい勿論』

慌てて名刺を渡せば嬉しそうに微笑んだ佐久間さん。

「じゃあ、また」

スッと立ち上がり、颯爽と帰って行く後ろ姿はとてもスマートだった。

唖然としてしまいお見送りもできず、ただポカンとその後ろ姿を見つめた。

その背中が見えなくなったあと、ラウに連れられるがまま控室へと戻った。

「さっきの人、100万円置いてったね」

『えっ、あれそんなにあったの？』

「うん、オーナーがすごく喜んでた」

ラウはまた今月もNo. 1だね、と言って無邪気に笑って控え室を出て行った。

『あの人何者なんだろ……』

帰り支度を終えた。
カバンの中にある顧客ノートを開き、書き綴る。

“佐久間さん若め平均身長お酒が弱い綺麗な顔変わった人”

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