桃ジュース【桃】 (ページ37)

今日:28 hit、昨日:15 hit、合計:328,916 hit

37 ページ37

…

「なんでそんな泣きそうな顔してるの笑」

『泣きそうになってないです』

「本当に？笑

目、真っ赤になってるよ？」

言われて気づいたが微かに視界が霞み、目は熱を保っていた。

慌てて持っていたハンカチで目元を抑える。

普段あまり感情的にはならないのだが、佐久間さんのことになるとどうやらそうはいかないらしい。

『もう会えないと思っていたので、

まさか今日こういう形で話せるとは思ってなかったんです』

「まぁそうだよね、俺酷いこと言ったもん」

佐久間さんはごめんね、と自嘲気味に笑った。

「あの日、突き放したつもりだったんだけどさ。

あの表情で、あの声で、

ずっと待ってますなんて言われたら俺だって忘れられないよ」

狡い人だね、なんて怪しげに微笑む佐久間さん。

今にも消えてしまいそうな儚い存在だった彼。
その心に少しでも残っていられたことが単純に嬉しかった。

佐久間さんは微かに上がった口角を下げ、真剣な表情になった。

「俺、もう足を洗ったんだ」

…