桃ジュース【桃】 (ページ2)

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「また来るよ」

『ありがとうございます、楽しみにしてます』

前川様の後ろ姿が見えなくなるまで見送る。

お酒を堪能して、色々なお話を聞いて、時間は一時間半くらい経っていた。

もうこの時点で他の在籍スタッフの何倍もの売り上げをあげている私。

また控室に戻ってピンヒールを脱ぎ捨てた。

「はい、これ」

ソファに横たわる私にペットボトルの水を差し出した彼。

『ありがとう、ラウール』

高身長に甘いマスク、某有名私大に通う彼は学費のためにここで黒服をしている。

こんな良い見た目をしているならホストをやれば良いと思うのだが、彼曰く俺はインキャだから無理、とのこと。

「無理してない？大丈夫？」

『うん、平気平気』

実は同い年の私たち。

こうやって接客から離れている時間はよく一緒に話している。

『そういうラウこそ、勉強は大丈夫なの？』

「うん、僕結構要領いいからさ」

『うわ〜、ムカつく』

「ムカつくとか言わないでよ〜」

ラウの家庭は片親であまり裕福ではないと言っていた。

自分の我儘で私大に進ませてもらっているから、と自分で学費は稼ごうと思っているらしい。

その家族愛というか、ラウから伝わる良い家庭で育った故の温かみというか、たまにそんなものを感じて羨ましいと思ってしまうこともあった。

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