桃ジュース【桃】 (ページ3)

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「A、指名入ったって」

飲み物を取りに離れていたラウが戻ってきた時、少し悲しそうな顔で言った。

きっと疲れ気味の私を心配しているのだろう。

『今日はもういいって思ってたんだけどなぁ』

「No. 1は大変だね…」

ラウに見送られつつ、身支度を整える。

この時間は特に予約を入れていなかったから新規のお客様だろう。

(変な人じゃありませんように)

たまに引きが悪いと酷な時間を過ごすことになるこの仕事。

どんな人だろうと遠目で見てみる。

(若いな……)

いつもの私が座る席で待っていたのはピシッとしたスーツを着こなす若い男性だった。

『初めまして、Aです』

隣に座る前に一礼して挨拶をする。

すると彼も立ち上がってこちらに一礼した。

「初めまして、よろしくお願いします」

『えっ…』

いつもは一方的に挨拶するだけ、相手は座ったままだから思わずキョトンとしてしまった。

そして、

(すごく綺麗な顔の人……)

スッと通った鼻筋に黒目の大きな目、透き通る白い肌に自然に上がった口角。少しピンクがかった明るい髪色。

中性的なその容姿は清潔感が溢れていた。

思わず顔を見つめてしまっていた私。ハッとして我に帰る。

「あっ、すみません笑

こういう場所初めてで、どうしたらいいかわかんなくて」

恥ずかしそうに笑った彼を見て一瞬で分かった。

この人は真っ直ぐで綺麗な人だ。

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