穏やかな仮面【緑】

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1冊目を読み終えた頃、








阿部もちょうど一息ついていた。









阿「僕、本に集中してたらお腹すいてきちゃったんですけれど。








どこかにお昼ご飯食べに行きませんか？」









あまり大きな声は出せない場所なので、









コソコソと話す阿部。









確かに時間はちょうどお昼時、こちらもお腹がすいてきた頃だった。









私は目線を合わせてこくりと頷いた。









・








阿「沢山本があって凄かったですね！









あそこは丸一日居れちゃうなぁ」









『そうですね、





特にミステリがマニアックなものまでありましたね』









阿「確かにそうですね！








Aさんの好みの本もあったみたいで良かったです」









阿部はこちらを見ながら終始爽やかな笑顔で話してい
る。









(こんなに穏やかな人、今までに見たことないってくらいにフワフワしてるな……)









思わず感心していると、








阿「危ない！」









向かい側から来ていた自転車とぶつかりそうになった。









不意に阿部に引き寄せられ間一髪で避ける。









『すみません、ありがとうございました』









阿「いえいえ、どういたしまして。








でも、









ボーッとしながら歩くのは危ないから次からは気を付けてくださいね？」









引き寄せられていた体を離される。









華奢だと思っていたのに意外と力強かったから少し驚いた。









(顔も言動もどこか中性的なのに、




男の人らしい所もあるんだな……)









阿「Aさん、またボーッとしてますよ」









『えっ、あっ、ごめんなさい』









阿「言ったそばから、何をそんなに考えてるんですか？」









『んー、何でしょうね』









あなたの事を考えてました、なんて言える訳もなく適当に返せば、









阿「えー、気になるなぁ。」









阿部はまたふんわり微笑んだ。







…

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