水墨 ページ8
Aさんが用意したのは水と墨と筆とスポイト。これだけで墨を使う絵を描こうとしてる事は分かる。でも墨って難しくない?だって一色しかないじゃん。絵にするの絶対難しいでしょ。
水墨画だっけ、あれやるのかな。でも水墨画にスポイトって必要か?いまいちAさんのやろうとしてる事が分からないんだよね。
Aさんは水を含ませた筆を持つと迷いなく紙に何かを描いていく。絵の具じゃなくて水だから何を描いてるのかは分からない。
Aさんが筆を紙の上に走らせてたのは僅か十数秒。筆を置いたらスポイトで墨を吸った。ここで漸くAさんのやろうとしてる事が理解できた。
「わああぁぁ!凄ーい!!」
「これ鶯!?凄ぇ!!」
「ヤベぇ、鳥肌立った!」
「えぇ、Aさんこんなのもできちゃうの?もっきゅん知ってた?」
「いや、俺も初めて見た」
筆を走らせてた部分に数か所、スポイトで墨を垂らすとジワジワと広がって鶯と桜が現れた。これは凄い。いやマジでAさん凄いわ。
《どう?》
「凄いしか言えないくらい凄い!」
「俺普通に欲しい」
「俺も」
《こんなのでよかったら誰かにあげるよ》
「え、いいんですか!?こんな凄いの!」
Aさんが笑って頷いたから、誰が貰うかって話になったんだけど……。
「モトキはダメ」
「ん!?何で!?」
「だってお前はいつでも描いてもらえるじゃん」
「俺らは今しかないけどな」
「仲間外れよくない!」
「じゃあモトキ抜いた4人でじゃんけんするか」
「え、本気で俺抜き!?」
確かにAさんによく絵描いてって言って描いてもらうけど!俺だってその絵欲しいよ!?
そんな俺の意見は聞き入れてもらえず、4人でのじゃんけんが始まった。そんなぁ……。
[どうしたの?]
流石に読話ができなかったみたいで俺に何があったのか聞いてきたAさん。事の顛末を説明すると申し訳なさそうな顔をする。Aさんのせいじゃないのに。
だから俺はAさんの頭を撫でた。気にしなくていいよって。
[じゃあまた今度家で描いてあげる]
[本当?ありがとう!]
そんな事をAさんとやりとりしてるとじゃんけんの決着がついた。
「よっしゃ!」
「お、マサイの一人勝ち?Aさん、勝ったのマサイだって」
「負けた……」
「欲しかったなぁ」
「何でチョキを出さなかった俺ぇ!」
Aさんから絵を貰ったマサイは笑った。嬉しそうなマサイを見てAさんも嬉しそうだ。
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Ria(プロフ) - やばいです…感動ものです……グスッ、泣いちゃいました…。素敵な作品をありがとうございます…!! (2020年3月22日 21時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - 善処さん» ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!(*≧∀≦*) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» やっぱりそう思いますよね…分かります。 (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - danchanさん» 三宅さんが手話ができると知ったので、これは出すしかないと思い、出させていただきました! (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ゆりりんさん» 作者も書いてて泣きそうになってました…(´;ω;`) (2019年10月29日 10時) (レス) id: 6f454b9d63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀧 | 作成日時:2019年8月9日 0時