また君の隣にいたい【Fischer’s】

同衾 ページ6

そんな訳でAさんと一緒のベッドに入りました。ちょっと待って、これ想像以上に近い。近すぎる。横を向けばすぐ近くにAさんの顔。


バチっと目が合って同じタイミングで逸らした。いやもうこれ本当ダメだ。嬉しい筈なのに恥ずかしさが今更になって湧いてきた。一緒のベッドで寝るのはまだ早かったかも……でもAさんから一緒に寝ようって言われるのこれが最後かもしれないし……。



「うわああぁぁぁ……」



Aさんがいない方に顔を向けて手で覆った。いや本当色々ヤバいんだって。だってAさんの体温を背中で感じるんだよ。前俺の家にAさんが泊まった時は隣では寝たけど違う布団だったし、手は繋いだけどさぁ……。


でもここしか寝る場所ないんだし、腹括るしかない！意を決してAさんの方を向いた。顔を赤くして目に薄っすら涙を浮かべたAさんと目が合う。自分から誘ったのに恥ずかしそうにしちゃって可愛い。俺が今日誕生日だから頑張ってくれてるんだと思う。もうすぐ日付け変わるけども。



「……Aさん、今日はありがとう」
［何が？］
「思い出に残る誕生日になったから。こんなに幸せだと思った誕生日生まれて初めてだよ」
［幸せ？］
「うん、すっごく幸せ。Aさんは？」
［私も幸せだよ］



“幸せ”ってさ、こんなに嬉しい言葉なんだね。Aさんと付き合ってから幸せだと感じて心が満たされる事が多くなった。Aさんもそうだったらいいなとか、どんな事をすれば喜んでくれるかなとか、そんな事ばかり考えてる。


でもAさん見ればすぐに分かる。だってAさんって感情が表情に出るんだもん。嬉しいも不安も恥ずかしいも怖いも、全部分かりやすい。今は恥ずかしいが大半を占めてるかな。Aさんの恥ずかしがってる表情って凄く可愛くて大好きなんだよね。


もっともっと見たくて、Aさんの手を握った。指を絡めれば手を引こうとするから阻止した。



「今日も手を繋いで寝よう？」



恥ずかしさが限界突破したのか、俺の肩に顔を埋めて隠しちゃった。そんな事するのも可愛いのに、分かってないなぁ。Aさんの一挙手一投足が俺のツボなのも分かってない。


繋いでない方の手を伸ばしてさらさらなAさんの髪を梳く。この感触好き。あ、今度三つ編みやらせてもらお。何度も繰り返してると瞼が重くなってきた。ベッド入る前は眠くなかったのにな。彼女の頭のてっぺんにキスをしてから俺は目を閉じた。

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